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ブランドとは?ロゴではなく、お客様の心の中にある印象のこと

ブランドは会社の手元にはない。お客様の頭と心の中にだけ、ある。

この記事の結論
ブランドとは、ロゴやデザインのことではなく、お客様の頭と心の中にある「感情をともなった評判や印象」のことです。そしてブランディングとは、お客様にどんな気持ちを抱いてほしいかを決め、その印象を育てていく取り組みです。

「うちもそろそろ、ブランディングをやらないといけないと思っていて」

経営者の方から、毎年たくさんのご相談をいただきます。そこで私が「ブランディングで、何をしたいですか?」と聞くと、返ってくる答えはだいたい決まっています。

「ロゴを新しくしたい」
「ホームページをかっこよくしたい」
「パンフレットを作り直したい」

気持ちはとてもよくわかります。私自身、もともとはグラフィックデザイナーでした。デザインの力は信じていますし、ロゴが変わると社内の空気が変わることもあります。

それでも、あえて言います。ロゴを変えることは、ブランディングではありません。

実際、「ロゴマーク=ブランドだと思っていた」という経営者の方は、とても多いのです。

この記事では、ブランディングの出発点である「そもそもブランドとは何か」を、できるだけ身近な例を使ってお話しします。少し長くなりますが、ここを押さえるだけで、ブランディングにかけるお金と時間のムダが大きく減るはずです。


目次

1. Appleのロゴは、ブランドだろうか?
2. ブランドとは「お客様の頭と心の中にある印象」
3. ブランドエクイティとは?お客様の頭の中にある4つの資産
4. 知られていないだけで、どの会社にもブランドはある
5. 「強いブランド」の条件に、ロゴは入っていない
6. ブランディングとは、お客様の「感情」をデザインすること
7. インナーブランディング:ブランドは社内から壊れていく
8. 中小企業のブランディングにお金はかかるのか
9. 目指すのは「戦わないブランド」
10. よくある質問


1. Appleのロゴは、ブランドだろうか?

ロゴとブランドの違い|ロゴ:ただの形と色/ブランド:お客様の頭と心の中にある印象

かじられたリンゴのマークを見れば、誰でも「Appleだ」と分かります。では、あのマークは「ブランド」でしょうか?

答えは「いいえ」です。

あのマークは、ただの形と色です。リンゴの形をした図形を見て、私たちの頭が勝手に「これはAppleだ」と認識しているにすぎません。スターバックスの緑のマークも、ナイキのマークも同じです。

では、ブランドはどこにあるのでしょうか。

2. ブランドとは「お客様の頭と心の中にある印象」

ブランドとは|ブランドとは、お客様の頭と心の中にある「感情をともなった印象」。

私はMacもiPhoneも大好きです。使いやすいからだけではありません。デザインが美しく、使っていると気分が上がるからです。

この「好き」「気分が上がる」という気持ちは、どこにあるでしょうか。ロゴの中ではありません。私の頭と心の中にあります。

つまりブランドとは、

お客様が持っている、感情をともなった「評判」や「印象」

のことです。好きか、嫌いか。信頼できるか、できないか。ブランドは、いつもお客様の心の中に存在しています。

もう少しくわしく言うと、ブランドについて大切なポイントが3つあります。

1. ブランドは「資産」である:お金をかけて終わりの「費用」ではなく、育てて増やしていくもの
2. ブランドは「常に変化する」:一度つくれば終わりではなく、良くも悪くも動き続ける
3. 買っていない人にも印象を与えている:まだお客様になっていない人の頭の中にも、ブランドはある

ロゴやデザインは、この「印象」を伝えるための道具の一つにすぎないのです。

3. ブランドエクイティとは?お客様の頭の中にある4つの資産

頭の中のブランドは、こう積み上がる|知っている(認知)、良さそうと感じる(知覚品質)、思い浮かべる(連想)、好きで、また選ぶ(ロイヤルティ)

「ブランドは頭の中にある」と言われても、少しふわっとして聞こえるかもしれません。

そこで役に立つのが、「ブランドエクイティ(ブランドの資産価値)」という考え方です。アメリカの経営学者デービッド・アーカーが広めた考え方で、ABでもくり返し扱っています。

お客様の頭の中にあるブランドは、大きく分けて次の4つでできています。

① 知っている(認知)
そもそも名前や存在を知っているか
例えば:「その会社、聞いたことある」

② 良さそうだと思う(知覚品質)
品質が良いと感じているか
例えば:「あそこの商品なら間違いない」

③ 何かを思い浮かべる(連想)
その名前から何を連想するか
例えば:「Apple=おしゃれ、使いやすい」

④ 好きで、また選ぶ(ロイヤルティ)
ファンになり、くり返し選んでいるか
例えば:「次もやっぱりここで買う」

ここで注目してほしいのは、「品質が良い」ではなく「品質が良いと感じている」という点です。どんなに良い商品でも、お客様にそう感じてもらえなければ、頭の中の資産にはなりません。「いい商品なのに売れない」という悩みの多くは、ここにつまずいています。

そして、好きになってもらうためには、まず知ってもらわなければいけません。この4つは、知る → 良いと感じる → 思い浮かべる → 好きになると、順番に積み上がっていくものです。

4. 知られていないだけで、どの会社にもブランドはある

どの会社にもブランドはある|問題は、その印象が狙ったとおりになっているかどうか。

ここで、ひとつ質問です。おもちゃのブランドを、いくつ言えますか?

「トミカ」「リカちゃん人形」……多くの大人は、このあたりで止まってしまうと思います。でも、小さな子どもやそのお母さんは、もっとたくさんのおもちゃのブランドを知っています。

ブランドは、たくさん存在しています。ただ、届けたい相手以外には知られていないだけなのです。逆に言えば、おもちゃ屋さんにとって、私たち大人は「ターゲットではない」ということでもあります。

これは中小企業も同じです。「うちにはブランドなんてない」とおっしゃる経営者の方は多いのですが、お客様や取引先が抱いている印象は、すでに必ずあります。

問題は、ブランドがあるかないかではありません。その印象が、狙ったとおりになっているかどうかです。

5. 「強いブランド」の条件に、ロゴは入っていない

「強いブランド」の条件(ロゴは入っていない)|リピートするお客様が多い、他と違う強みがはっきり、価格が高くても売れる、長く売れ続けている、熱狂的なファンが多い、利益率が高い、市場の価格が安定

では、「強いブランド」とはどんなブランドでしょうか。

日本企業を対象にした調査(『2003年版 日本企業のブランド・マネジメント』)では、企業が考える「強いブランド」の条件として、次のようなものが挙がっています。

・リピートするお客様が多い
・他のブランドと違う強みがはっきりしている
・価格が高くても売れる
・長いあいだ売れ続けている
・熱狂的なファンが多い
・利益率が高い
・市場の価格が安定している

どうでしょうか。この中に「ロゴがかっこいい」「ホームページがきれい」という条件は、ひとつも入っていません。

並んでいるのは、どれもお客様が、その会社をどう思い、どう行動しているかです。「価格が高くても売れる」「利益率が高い」とあるように、強いブランドは、そのまま会社の利益につながります。ブランディングは見た目の話ではなく、経営の話なのです。

6. ブランディングとは、お客様の「感情」をデザインすること

ブランディングの4つの要素(すべて双方向)|哲学・戦略・組織・コミュニケーションは、すべて双方向につながっている

ブランドがお客様の心の中にあるのなら、ブランディングで最初に考えるべきことは、ロゴの形ではありません。

・誰に買ってほしいのか
・誰に喜んでほしいのか
・誰に、くり返し選んでほしいのか
・その人に、どんな気持ちを抱いてほしいのか

ここから考えるのがブランディングです。私はこれを「相手の感情をデザインする」と言っています。

マーケティングの世界ではよく「ペルソナ(理想のお客様像)」をつくります。でも、「40代・女性・会社員」と決めるだけでは足りません。大切なのは、その人が何にうれしくなり、何に不安を感じ、どんな瞬間に心が動くのかを理解することです。

しかも、お客様の気持ちは変わり続けます。20代だったお客様も、10年たてば30代になります。だからブランドも、お客様を学び続けなければいけません。先ほどの「ブランドは常に変化する」とは、こういうことです。

ブランディングは、4つの要素で育てる

では、その「感情」は何によってつくられるのでしょうか。私は、次の4つの要素だと考えています。

① 哲学
私たちは、何のために存在するのか?

② 戦略
どうすれば、戦わずに選ばれるか?

③ 組織
社員や取引先と、同じ方向を向いて実現できるか?

④ コミュニケーション
お客様に、どんな気持ちを抱いてほしいか?

ロゴやホームページは、このうち「コミュニケーション」の一部にすぎません。

そして、4つは上から順に決めていくものではなく、おたがいに影響しあっています。哲学がなければ戦略はぶれ、戦略がなければ発信は埋もれ、組織が弱ければどんな哲学も実現できません。逆に、お客様の反応や現場の声が、哲学や戦略を磨き直すこともあります。1つだけを整えても、ブランドは育たないのです。

7. インナーブランディング:ブランドは社内から壊れていく

インナーブランディング|ブランドは、社外より先に社内から壊れていく。

もうひとつ、見落とされがちなことがあります。ブランドは、社外より先に社内から壊れていくということです。

社長が「お客様にこう感じてほしい」と思っていても、社員が「面倒だな」「それは自分の仕事じゃない」と感じていたら、お客様に届く印象はバラバラになります。電話の対応、店頭のあいさつ、メールの一文。お客様は、ロゴよりもずっと多くの場面で、会社の印象を受け取っています。

会社が大きくなり、社員が増えるほど、創業時の想いは伝わりにくくなります。放っておくと、ものごとはだんだん散らかっていく。物理の世界で「エントロピーの法則」と呼ばれるものと同じことが、組織でも起こります。

つまり、ブランドは、つくり始めたその瞬間から、壊れ始めているのです。

だからこそ、ブランディングは会社が小さいうちから始めたほうがいい。そして、社員と同じ方向を向くこと(インナーブランディング)が欠かせません。私はこれを「マインドイノベーション(心を変えること)」と呼んでいます。会社の想いに共感し、自分ごととして動ける人が増えるほど、ブランドは強くなります。

8. 中小企業のブランディングにお金はかかるのか

中小企業のブランディングの進め方|5万〜10万円の小さな金額で試す、お客様の反応が変わったか確かめる、勝ちパターンに大きく投資する

ここまで読んで、「大事なのはわかった。でも、うちのような中小企業に、そこまでお金はかけられない」と感じた方もいるかもしれません。

まず、意外に思われるかもしれませんが、ブランディングが今すぐ必要でない会社もあります。それは、経営がうまくいっている会社です。

ブランディングは、何のためにやるのか。経営をうまくいかせるためです。私がいちばん避けたいのは、「ブランディングにはお金をかけているのに、経営が苦しい」という状態です。これは本末転倒です。

財務が健全で、社員が幸せに働けていること。 これはブランディングよりも優先すべきことです。その上で、「将来のために、もっとブランドを高めたい」と思ったときに、ブランディングに取り組めばいいのです。

そして、中小企業のブランディングは、いきなり300万円、500万円を投じるやり方ではありません。その投資が本当に回収できるかは、誰にもわからないからです。

私がおすすめしているのは、

1. 5万円、10万円といった小さな金額で試してみる
2. ブランドが育っているか(お客様の反応が変わったか)を確かめる
3. 「これは効く」という勝ちパターンが見つかったら、そこに大きく投資する

という進め方です。ブランディングは、勝ちパターンを見つけるのが先。お金をかけずにやる方法を探すことこそ、中小企業のブランディングの正しい答えだと考えています。

9. 目指すのは「戦わないブランド」

戦わないブランド|「この分野なら、あの会社」と思ってもらう。

私は、中小企業が目指すべきブランドを「戦わないブランド」と呼んでいます。

自社がすでに持っている人・もの・お金・情報・お客様を見直し、他社が真似できない「お客様にとっての良さ」を磨いていく。そうすれば、無理に競争しなくても選ばれるようになり、それが長く利益を生み続けます。

価格で戦ったり、広告の量で大企業と競ったりする必要はありません。お客様の頭の中で「この分野なら、あの会社」と思ってもらえる独自のポジションをつくれば、そもそも戦わずに選ばれるようになります。

その出発点が、今日お話しした「ブランドはお客様の頭と心の中にある」という理解です。


今日からできる、3つの問い

今日からできる3つの問い|お客様は、私たちを一言でどう表現する?、本当は、どう思われたいのか?、社員は、それを同じ言葉で言える?

最後に、明日からすぐに試せることをご紹介します。ロゴを変える前に、次の3つの問いに、言葉で答えてみてください。

1. 私たちのお客様は、私たちの会社を一言でどう表現するだろうか?
(できれば想像ではなく、実際に何人かのお客様に聞いてみてください)
2. 本当は、お客様にどう思われたいのか?
(1と2のあいだにある「ズレ」が、ブランディングで埋めるべきものです)
3. 社員は、2の答えを同じ言葉で言えるだろうか?
(言えないなら、まずは社内から始める必要があります)

この3つに答えるだけでも、自社のブランドが「どこにあって」「どこがズレているか」が見えてきます。

よくある質問

Q. ブランドとブランディングの違いは何ですか?

ブランドは、お客様の頭と心の中にある「感情をともなった印象」そのものです。ブランディングは、その印象を狙いどおりに育てていくための取り組み全体を指します。ブランドが「結果」、ブランディングが「そこに向かう活動」と考えるとわかりやすいでしょう。

Q. ロゴを変えるとブランディングになりますか?

ロゴを変えるだけでは、ブランディングにはなりません。ロゴはブランドを伝える「道具」のひとつです。先に「お客様にどう思われたいか」を決め、その印象を伝えるためにロゴを使う、という順番が大切です。

Q. 中小企業にもブランディングは必要ですか?

必要です。会社が小さいうちのほうが、社長の想いを社員やお客様に伝えやすく、ブランドをつくりやすいからです。ただし、財務が健全であることが前提です。いきなり大きな金額をかけず、小さく試しながら進めるのがおすすめです。

Q. ブランディングの費用はどのくらいかかりますか?

決まった金額はありません。私たちは、まず5万〜10万円ほどの小さな取り組みで反応を確かめ、効果のある「勝ちパターン」が見つかってから大きく投資する進め方をおすすめしています。

Q. ブランドエクイティとは何ですか?

ブランドが持つ「資産としての価値」のことです。お客様の頭の中にある「認知(知っている)」「知覚品質(良さそうだと感じる)」「連想(何かを思い浮かべる)」「ロイヤルティ(好きで、また選ぶ)」の4つで考えるのが一般的です。


まとめ

まとめ|ロゴを変える前に、どう思われたいかを言葉にする。

・ロゴやデザインは、ブランドではない。ブランドを伝える道具である
・ブランドは、お客様の頭と心の中にある「感情をともなった印象」
・頭の中のブランドは「知る → 良いと感じる → 思い浮かべる → 好きになる」と積み上がる
・「強いブランド」の条件は、リピート・価格・利益率など、経営の成果そのもの
・ブランディングとは、お客様の感情をデザインすること
・ブランドは社内から壊れていく。社員と同じ方向を向くことが欠かせない
・中小企業は、小さく試して勝ちパターンを見つけてから投資する

「ロゴを変えれば、ブランディングができる」わけではありません。まずは、自社がお客様にどう思われたいのかを言葉にするところから始めてみてください。


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株式会社オムニモスーク 代表 安田旬佑

著者プロフィール
安田旬佑(やすだ・しゅんすけ)。株式会社オムニモスーク代表。グラフィックデザイナーを経て2007年に会社を設立し、2013年にニューヨーク支社を設立。広告・マーケティング・ブランディングの分野で25年以上、中小企業から上場企業まで年間300件以上の相談を受けている。事業構想修士(MPD)。孫子の兵法に着想を得た「戦わないブランディング」を体系化し、2020年から経営者向けの勉強会「The Art of Branding」を主宰。

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