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USPとは?日清・明治に学ぶ「買う理由の約束」のつくり方

この記事の結論
USP(Unique Selling Proposition)とは、競合が言えない、お客様が買う理由の約束のことです。提唱者のロッサー・リーブスは、約束であること、競合が提供できないか提供していないこと、新しいお客様を連れてくるほど強いこと、の3つを条件にしました。1958年の日清食品チキンラーメンは「お湯を注ぐとたった2分」、明治おいしい牛乳は「新鮮な生乳のおいしさ、そのまま」。私は講義で、「この商品のいいところは〇〇です」と一言で言えるかどうかを、USPの入口にしています。キャッチコピーは、その後です。

「うちの商品を一言で言えと言われると、困る」

そう言う経営者の方は、多いです。ここでいうUSPは、広告・マーケティングの言葉(ユニーク・セリング・プロポジション)のことです。提唱者の言葉と、2社の公式資料で、USPの中身を順に読みます。


1. USPとは何か。提唱者の3つの条件

USPを提唱したのは、米国の広告会社テッド・ベイツ社のクリエイティブ・ディレクターだったロッサー・リーブスです。広告業界の殿堂(Advertising Hall of Fame)のページには、リーブスの考えがこう書かれています。広告は、買うための「ユニークで説得力のある理由(reason why)」に、よそ見をせずに集中したときに、いちばん効く。

1961年の著書『Reality in Advertising』には、USPの3つの条件が書かれている、と引用されています。

  • 広告は、お客様に約束をしなければならない。買えば、この具体的な利益が手に入る、と
  • その約束は、競合が提供できないか、提供していないものでなければならない
  • その約束は、大衆の何百万人を動かすほど、つまり新しいお客様を連れてくるほど、強くなければならない

ここで大事なのは、「ユニーク」の意味です。他社と違う、だけでは足りません。他社が言えない、または言っていない約束であること。そして、それが買う理由になっていること。他社と違うだけでは、まだ独自性とは呼べません。

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2. 日清食品:「お湯を注ぐとたった2分」

USPを一言にしている例:日清食品と明治

日清食品の公式年表「安藤百福クロニクル」には、こう書かれています。1958年8月25日、世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」が発売された。「お湯を注ぐとたった2分で食べられる『チキンラーメン』は、当時の常識では考えられない食品だったため《魔法のラーメン》と呼ばれました」。

価格は1食35円。同じ年表によると、うどん玉ひとつが6円の時代で、問屋の主人たちは「これでは商売にならない」と仕入れを渋ったそうです。それでも、食べた人の「おいしくて便利だ」という声が高まり、問屋に注文が殺到した、と続きます。

ここからは、私の読みです。「お湯を注ぐとたった2分」は、リーブスの3つの条件をそのまま満たしています。買えばこうなる、という約束。1958年には、他社が言えなかった約束。そして、問屋が渋るほどの価格差を越えて、新しいお客様を連れてきた。製法(瞬間油熱乾燥法)は商品の側の言葉で、「2分」はお客様の側の言葉です。USPになったのは、「2分」のほうでした。

ついでに言うと、現行の公式商品ページでは「お湯かけ3分」と書かれています。約束の言葉は、時代と商品に合わせて書き換えられています。

3. 明治:「新鮮な生乳のおいしさ、そのまま」

明治おいしい牛乳の公式商品ページの一行目は、「新鮮な生乳のおいしさ、そのまま」です。続けて、ナチュラルテイスト製法でつくり、牧場で飲む搾りたての牛乳のおいしさを味わえる、と説明されています。原材料は生乳100%(国産)、殺菌は130℃で2秒間。

2018年3月14日の同社のニュースリリースには、この製法の中身が書かれています。殺菌前に、生乳に含まれる溶存酸素を低減することで、酸化による風味の変化を抑える。2018年には貯乳の段階にも脱酸素の工程を加え、特許の番号(第5008081号・第5259850号)まで記載されています。

「そのまま」という一言の裏に、番号つきの技術がある。約束の言葉は短く、根拠は深い。そして、商品名そのものが「おいしい牛乳」です。牛乳という既存のカテゴリーの中に、「おいしい牛乳」という新しい呼び名を置いた。私は講義で、新しいカテゴリーの名前には3つの条件がある、と整理しています。その商品が何であるかが分かること、今までにない商品のイメージを伝えること、その上で最短の名詞であること。「おいしい牛乳」は、この3つに収まっています。

4. USPは、キャッチコピーの前にある

私は講義で、商品のコンセプトを2つに分けて整理しています。商品コンセプトは、商品のアイデアと、お客様に与える効用・便益。表現コンセプトは、新しいカテゴリーの名前と、ユニークで売り込みのきく主張。USPは、この「ユニークで売り込みのきく主張」にあたります。

スライドには、こう書きました。「この商品はどういいですか?と聞かれたら、一言でなんといいますか?」「この商品のいいところは〇〇〇〇です」。この〇〇に入る言葉が決まってから、キャッチコピーになります。コピーは何万通りも書けますが、約束の中身は一つです。その一つが決まってはじめて、キャッチコピーを選べます。

もう一つ、分けておきたい言葉があります。ブランドプロミスです。ブランドプロミスは、会社がお客様に対して守り続ける約束。USPは、その中で「買う理由」になる、商品単位の約束です。違いは、ブランドプロミスとは?に書いています。

5. 35円と6円。約束が、値段を支えた

35円と6円:チキンラーメンが約束で値段を支えた

もう一度、日清食品の年表に戻ります。1958年のチキンラーメンは1食35円。うどん玉ひとつが6円の時代でした。私の計算で、約6倍の値段です。問屋の主人たちは「これでは商売にならない」と仕入れを渋った。それでも、食べた人の「おいしくて便利だ」という声が高まり、注文が殺到した、と年表は書いています。

チキンラーメンは、値段を下げて広まったのではありません。値段はそのままで、「お湯を注ぐとたった2分」という約束が、6倍の値段の説明を引き受けた。お客様は、麺の量や原価を比べたのではなく、2分で食べられる暮らしに35円を払った、と私は読んでいます。

稲盛和夫さんに学んだ考え方で、値段を決めることは、社長が担う経営そのものだと私は考えています。お客様も喜び、自社も利益が出る一点を探す仕事です。その一点を探すとき、USPが決まっていない会社は、他社の値段を見るしかありません。約束が決まっている会社は、その約束にお客様がいくら払うかを見ることができます。

値段で説明したくなったら、その前に、「この商品のいいところは〇〇です」が一言で言えるかを確かめてください。USPを決めることは、値下げをしないで済む理由を、先に持つことです。

自社のUSPを、一言にする手順

今日、社内の3人に「うちの商品のいいところは?」と聞くところから始めます。

  • 「この商品のいいところは〇〇です」の〇〇を、10個書く。 技術、速さ、対応、価格、歴史。思いつく順に書き出します。
  • 10個を、「お客様に何が起きるか」の形に言い換える。 「瞬間油熱乾燥法」を「お湯を注いで2分」に。商品の側の言葉を、お客様の側の言葉に
  • 競合が言えないか、言っていないものだけを残す。 同業のウェブサイトを3社開き、同じことを言っている行を消す
  • 残った中で、新しいお客様を連れてくる一つを選ぶ。 いまのお客様が喜ぶ言葉と、まだ知らない人が振り向く言葉は、違います
  • その一言の根拠を、社内で確かめる。 明治の特許番号のように、約束の裏に、守れている事実があるか。なければ、約束の前に、事実をつくる

USPは、売り文句より先に、そして値札より先に決まるものです。約束の中身が決まれば、コピーも値段も、その後で決められます。

地域の中小企業のブランディングについては、ブランディング会社のページで、考え方と進め方をまとめています。

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よくある質問

Q. USPとキャッチコピーは、同じものですか?

違います。USPは「買う理由の約束」の中身で、キャッチコピーはそれを伝える言葉です。中身が一つに決まってから、コピーは何通りも書けます。

Q. 競合と同じ約束しか思いつきません。

同業のウェブサイトを3社開いて、同じことを言っている行を消してみてください。残った一行が、まだ誰も言っていない約束の候補です。残らなければ、約束の前に、守れる事実をつくるところから始めます。

Q. USPは、商品ごとに要りますか?

USPは商品単位の約束です。会社として守り続ける約束(ブランドプロミス)とは分けて考えてください。商品が複数あれば、USPも複数あって構いません。


この記事は、日清食品・明治・Advertising Hall of Fame の公式の記載と、ロッサー・リーブスの著書の引用をもとに、私の見方で読み解いたものです。

出典:日清食品「安藤百福クロニクル」 /同「チキンラーメン」商品ページ https://www.nissin.com/jp/product/items/13425/ /明治「明治おいしい牛乳 900ml」https://www.meiji.co.jp/products/milk_drink/4902705126558.html /明治 ニュースリリース(2018年3月14日)https://www.meiji.co.jp/corporate/pressrelease/2018/20180314_02.html /Advertising Hall of Fame「Rosser Reeves」https://advertisinghalloffame.org/inductee/rosser-reeves/ /Rosser Reeves『Reality in Advertising』(1961)の3条件は Robert W. Bly の記事 https://bly.com/Pages/DMNCOL12.htm の引用による

株式会社オムニモスーク 代表 安田旬佑