価格転嫁できない会社の共通点|ガリガリ君の値上げに学ぶ、交渉の前に決まっていること
この記事の結論
価格転嫁ができるかどうかは、値上げを伝える日より前に決まっています。赤城乳業は公式サイトで、ガリガリ君の値上げの履歴を、年と金額で全部出しています。しかも専用ページでは、お詫びの広告を「先々のバージョンも撮影しておきました」と書いています。値上げを、交渉ではなく、前もって設計した「作法」にしている。私は、価格転嫁を、価格の話ではなく、お客様との関係の話だと考えます。
「価格転嫁をしたいが、お客様が離れそうで言い出せない」
そう悩む経営者の方に向けて、赤城乳業が公式に公開している値上げのお知らせを、年表にして読みます。
1. 価格転嫁とは
価格転嫁とは、原材料費・人件費・エネルギー費などの上がった分を、商品やサービスの価格に反映させることです。多くの記事は、ここから交渉の進め方や、伝え方のコツへ進みます。
この記事は、その手前を読みます。値上げを受け入れてもらえる会社は、言い出す前に、何をしているのか。 同じ検索意図の既存記事(値上げできる会社の価格の決め方・値上げするなら今)とは、見る場所を変えます。
経営者・ブランド管理者向けThe Art of Branding 無料説明会次回勉強会のテーマ 「ブランディングに必須のアート思考とは」無料で申し込む2. 赤城乳業の公式な値上げの履歴

赤城乳業の公式お知らせによると、ガリガリ君の希望小売価格(税別)は、次のように変わってきました。
1981年(発売)
価格:50円
前回からの間隔:―
1991年
価格:60円
前回からの間隔:10年
2016年
価格:70円
前回からの間隔:25年
2024年
価格:80円
前回からの間隔:8年
2026年(3月1日出荷分から)
価格:90円
前回からの間隔:約2年
2025年12月19日のお知らせは、配送費・原材料費・包装資材費に加えて、人件費やエネルギーコストも上がり、経営の合理化・効率化で吸収することが極めて困難な状況になった、と値上げの理由を説明しています。理由が、数字ではなく、お客様に伝わる言葉で書かれている。ここを、まず押さえてください。
3. 値上げを「お詫びの作法」にしている
2024年3月のお知らせは、2016年に25年ぶりの値上げで70円になったあと、8年間価格を据え置いてきたこと、そして、お客様へ「より一層深くお詫び」することを書いています。2016年のときと同じく、赤城乳業の社員が出演する新聞・交通広告を出す、という内容です。
専用のお知らせページには、もっと細かな言葉があります。
- 「前回より深くお辞儀をしております。」
- 「念のため、先々のバージョンも撮影しておきました。」
- 「(撮影は1回ですませた方がリーズナブルなので)」
ここからは、私の読みです。値上げを、そのつど慌てて交渉するのではなく、値上げの伝え方そのものを、前もって決めている。お辞儀の深さまで、ブランドの表現にしている。だから、値上げのお知らせが、嫌われるお知らせではなく、この会社らしいお知らせになります。
私は、これを、お客様との関係が、値上げの前にできている状態だと読みます。ただし、この記事は、販売数の増減などの公式にない数字は書きません。値上げが何をもたらしたかは、公式の言葉の範囲で止めます。
4. 「有名になれば値上げできる」は、表面的な話
私は講義で、「ブランディングで有名になれば、価格が上げられる、というのは、実は表面的な話」だと話しています。有名であることと、価格に転換できることは、別です。
価格に転換できる会社には、順番があります。特徴があり、それがお客様の利点になり、感動になり、価値になって、はじめて価格になる。この流れのどこかが切れていると、値上げの案内は、ただの負担のお願いになります。
動画では、もう一つ話しています。値上げをするときは、物価が上がったから、とは言わない。価値がちゃんと上がりましたよ、という点を、きちんと伝える必要がある。 赤城乳業のお知らせが、コスト上昇の理由と、お詫びと、これまでの据え置きの歴史を、ひとつの形で並べているのは、この考え方に近いと私は読みます。
5. 価格転嫁を、4つの要素で読む

私は、ブランディングとは経営の全てであり、その活動であると考えています。価格転嫁は、4つの要素のどれが欠けても、苦しくなります。
- コミュニケーション: お客様に、どんな気持ちを抱いてほしいか。値上げの案内の言葉と形が、この会社らしさを決めます(お辞儀の深さまで)
- 哲学: 何のために存在するのか。価格を上げる理由を、コストだけでなく、続けるための理由として語れるか
- 組織: 同じ方向を向いて、実現できるか。社員が、自社の値上げを、自分の言葉で説明できるか
- 戦略: どうすれば、戦わずに選ばれるか。安さで選ばれてきた会社ほど、値上げの前に、選ばれる理由を足す必要があります
4つは、どこから入っても、ほかの3つへつながります。値上げの案内を磨く経験が、会社の哲学の言葉を磨き直します。
戦わないブランディングの定義は、こちらの記事に書いています。価格で戦わない会社は、値上げの交渉の席に、そもそも座りません。
価格転嫁の前に、書き出してみる
売上の大小に関わらず、順番は同じです。
- 自社が、価格で選ばれているのか、理由で選ばれているのかを、お客様3人に聞く。 聞けないなら、まだ値上げの準備が足りません
- 過去の値上げを、年表にする。 いつ、何円、どんな理由で、どう伝えたか。赤城乳業の公式ページを手本にしてください
- 値上げの理由を、コストの話と、続けるための話の2つに分けて書く。 お客様に渡す言葉は、後者から始めます
- 案内の言葉と形を、先に決める。 お詫びの言い方、伝える順番、社員全員が言える一文です
- 値上げの前に、価値を1つ足す。 情報でも、保証でも、手間でも構いません
値上げできるかどうかは、値上げの日より前の積み重ねで測れます。
地域の中小企業のブランディングについては、ブランディング会社のページで、考え方と進め方をまとめています。
▶ 関連記事:値上げできる会社の価格の決め方|30万円と1000万円の差
▶ 関連記事:価格の決め方|値決めは経営そのもの。3つのプライシングと「独占商品」の考え方
よくある質問
Q. 価格転嫁ができない業種や商品もありますか?
あります。価格が公的に決められているものなど、会社の判断だけでは転嫁できない場合があります。この記事は、価格を決められる範囲で、準備できることを扱っています。
Q. 値上げすると、お客様は離れませんか?
この記事は、離れるかどうかの数字は扱いません。私は講義で、値上げを恐れすぎず、新しいお客様を獲得する気持ちで動いたほうがいい、と話しています。ただし、価値が上がったことを伝える準備が先です。
Q. 大きな会社の例は、中小企業に当てはまりますか?
金額も規模も違います。当てはまるのは、値上げの伝え方を、前もって決めておく考え方です。
この記事は、赤城乳業の公式お知らせをもとに、私の見方で読み解いたものです。
出典:赤城乳業「ガリガリ君値上げのお知らせ」(2025年12月19日) /同(2024年3月1日)https://www.akagi.com/news/2024/240301.html /同「ガリガリ君 値上げ『70円→80円』」https://www.akagi.com/gari-neage/
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