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高付加価値経営とは|キーエンスの利益率51%の理由

営業利益率51%。キーエンスの強さは、商品よりも仕組みにあります。

この記事の結論
高付加価値経営とは、安く多く売るのではなく、お客様にとっての価値を大きくして、その対価をきちんといただく経営です。営業利益率50%を超えるキーエンスの強さは、商品の性能だけではありません。お客様の現場から学び、提案し、また学ぶという仕組みと、それを支える哲学と組織にあります。

「うちのような会社が、高い利益率なんて無理だ」

そう思う経営者の方にこそ、知ってほしい会社があります。工場の自動化に使うセンサーや測定器などをつくる、キーエンスです。

キーエンスの2026年3月期の営業利益率は51.0%。売上のおよそ半分が利益として残る計算です。ふつうの製造業の利益率が数%から10%ほどであることを考えると、驚くべき数字です。

なぜ、ここまで稼げるのでしょうか。


1. 経営理念は「会社を永続させる」

キーエンスの経営理念|会社を永続させる。最小の資本と人で、最大の付加価値をあげる。

キーエンスの経営理念には、次の言葉があります。

  • 会社を永続させる
  • 最小の資本と人で、最大の付加価値をあげる

高い利益は、目的ではありません。会社を長く続け、社員に良い仕事と良い給料を渡し続けるための結果です。

創業者の滝崎武光さんは、「社員一人あたりの付加価値を日本一にする」ことを目指したと言われています。付加価値の低い仕事しか社員に与えられないことは、経営者として最悪だ、という考え方です。

ここに、高付加価値経営の出発点があります。利益は、社員の人生を良くするためのものでもあるのです。

2. 付加価値は「お客様の現場」から生まれる

付加価値を生む循環|現場の困りごとを知る、多くの会社が使える商品を企画、直販で使い方まで提案、また現場から学ぶ

キーエンスの付加価値は、商品の性能だけから生まれているわけではありません。

  1. 営業担当がお客様の工場に足を運び、現場の困りごとを知る
  2. その情報をもとに、多くの会社が使える商品を企画する
  3. 自社の営業担当が直接、使い方まで提案する
  4. また現場から学び、次の商品に生かす

この循環が、強さの正体です。新しく生まれる商品の多くが「世界初」「業界初」だと言われるのは、お客様自身もまだ気づいていない困りごとを、現場で見つけているからです。

3. 「売る」のではなく「課題を解く」営業

選ばれ方の違い|価格から入る営業:価格で比べられる/課題を解く営業:解いた価値で選ばれる

キーエンスの営業は、商品を売りこむ営業ではありません。

お客様が驚くほどの、課題を解決する提案をする。だからこそ、お客様と営業担当が対等な関係になれる。そういう考え方が、創業のころから語られてきました。

価格の話から入る営業は、価格で比べられます。課題を解く営業は、解いた価値で選ばれます。ここに、値引きをしなくても選ばれる理由があります。

4. 「誰が言ったか」より「何を言ったか」

キーエンスの組織の3つの特徴|現場に権限をまかせる、「何を言ったか」で判断する、誰が担当しても良い判断ができる仕組み

キーエンスの組織にも、特徴があります。

  • トップがすべてを決めるのではなく、現場に権限をまかせる
  • 「誰が言ったか」ではなく、「何を言ったか」で判断する
  • 一人のカリスマに頼らず、誰が担当しても良い判断ができる仕組みをつくる

滝崎さん自身、「自分はカリスマではない」と語り、自分がいなくても会社が回るように考えてきたと伝えられています。一人ひとりが考え、提案できる会社だから、現場の情報が生きるのです。

5. 4つの要素で見る、キーエンスの高付加価値経営

キーエンスを4つの要素で見る|哲学・戦略・組織・コミュニケーションは、すべて双方向につながっている

ブランディングの4つの要素で整理すると、キーエンスの強さがよく分かります。4つは、おたがいに影響しあっています。

  • 哲学:会社を永続させる。最小の資本と人で、最大の付加価値をあげる
  • 戦略:現場の困りごとから、多くの会社が使える商品をつくる。直販で提案する
  • 組織:権限委譲。「何を言ったか」で判断する。仕組みで回る会社
  • コミュニケーション:お客様が驚くほどの課題解決の提案。それ自体がブランドになる

キーエンスは、広告で有名な会社ではありません。それでも、取引先の現場では「キーエンスに相談すれば何とかしてくれる」というブランドができています。


中小企業が、キーエンスから学べること

中小企業が学べる3つのこと|お客様の現場に行っているか、商品ではなく、課題の解決を売っているか、社員一人あたりの付加価値を見ているか

キーエンスのような規模でなくても、学べることはたくさんあります。

  • お客様の現場に行っているか。困りごとは、会議室ではなく現場にあります
  • 商品ではなく、課題の解決を売っているか
  • 社員一人あたりの付加価値を、経営の物差しにしているか

私がお手伝いしている会社でも、利益率の高い会社は例外なく、お客様の困りごとを誰よりも知っています。付加価値は、お客様を深く知ることから生まれます。

今日からできる、3つの問い

今日からできる3つの問い|最近、お客様の現場で困りごとを聞いたか、売っているのは「商品」か「課題の解決」か、社員一人あたりの付加価値はいくらか
  1. 最近、お客様の現場に行き、困りごとを直接聞きましたか?
  2. あなたの会社が売っているのは「商品」ですか、「課題の解決」ですか?
  3. 社員一人あたりの付加価値(粗利)は、いくらですか?

よくある質問

Q. 高付加価値経営とは何ですか?

安く多く売るのではなく、お客様にとっての価値を大きくし、その対価をきちんといただく経営です。利益を、会社を長く続け、社員に還元するための結果と考えます。

Q. キーエンスの営業利益率はなぜ高いのですか?

お客様の現場の困りごとから商品を企画し、直販で使い方まで提案し、また現場から学ぶという循環があるからです。課題を解く提案で選ばれるため、値引きで競争する必要がありません。

Q. キーエンスの経営理念は何ですか?

「会社を永続させる」「最小の資本と人で、最大の付加価値をあげる」などが掲げられています。高い利益は、会社を続け、社員に良い仕事を渡すための結果と位置づけられています。

Q. 中小企業が付加価値を高めるには、何から始めればいいですか?

まずお客様の現場に行き、困りごとを直接聞くことです。そのうえで、商品ではなく「課題の解決」を提案する形に、売り方を変えていきます。


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※ キーエンスについては、経営者のためのブランディング勉強会「The Art of Branding」の10月の回(2026年10月21日)で、さらにくわしく取り上げます。

株式会社オムニモスーク 代表 安田旬佑