ユニクロのブランディング|服の民主化という哲学の始まり
ユニクロの強さは、デザインからは始まっていません。
この記事の結論
ユニクロが世界的な企業になれたのは、安さやおしゃれな広告のおかげではありません。柳井正さんが「服とは何か」「ユニクロとは何か」を考え抜いた、哲学があったからです。その哲学が「服の民主化」です。哲学がぶれないから、業態を何度変えても、ユニクロはユニクロのままでいられました。
「ブランディングといえば、ロゴやデザインを整えること」
そう思っている経営者の方に、ぜひ知ってほしい会社があります。ユニクロです。
ユニクロは、ロゴやお店のデザインがすばらしい会社です。でも、私が25年ブランディングの仕事をしてきて断言できるのは、ユニクロの強さはデザインから始まっていないということです。始まりは、「服とは何か」を考え続けた一人の経営者の哲学でした。
1. ユニクロの強さは、まず「商品力」

ユニクロと聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。
多くの人は、フリースやヒートテック、エアリズムといった商品を思い浮かべるはずです。ユニクロは、まず「売れる商品」を持っていました。ブランディングが効いてくるのは、その後です。
ここは、中小企業にとって大切なポイントです。
- 売る力がないまま、ロゴやホームページだけを立派にしても、うまくいくことは少ない
- まず「選ばれる理由」があり、ブランディングがそれを大きく育てる
順番を間違えないことが大切です。
2. 2号店の大失敗から始まった

ユニクロは、最初から順調だったわけではありません。
柳井さんは、お父さまが経営する山口県の紳士服店「小郡商事」に入り、10年以上、思うようにいかない時期を過ごしています。そして1984年、広島に「ユニクロ」の1号店を出しました。倉庫のような店内に服をたくさん並べ、お客様が自分でかごに入れて買う「カジュアルウェアハウス」です。
1号店は大成功しました。ところが、勢いに乗って出した2号店は、大失敗します。
ここで柳井さんは、「うまくいった形をくり返す」のではなく、「そもそもユニクロとは何か」を考え直していきます。
3. 香港で見た「SPA」という答え

転機は、香港でした。
当時、ユニクロで1,900円で売っていたポロシャツと同じようなものが、香港の「ジョルダーノ」では約1,500円で売られていました。調べてみると、ジョルダーノは問屋を通さず、自分たちで服をデザインし、工場から直接仕入れて売っていたのです。
これが、SPA(製造小売)というしくみです。
ユニクロは、「つくった服をどう売るか」から、「売れる服をどうつくるか」へと考え方を切りかえました。
4. 業態は変わっても、哲学は変わらない

ユニクロは、事業が大きくなるたびに、形を変えてきました。
- 倉庫のような「カジュアルウェアハウス」
- 郊外のロードサイド店
- 自分たちで服をつくる「SPA」
- 世界の大都市の「グローバル旗艦店」(銀座、ロンドン、パリ、ニューヨーク、上海など)
- そして、デジタルで服をつくって届ける「情報製造小売業」へ
旗艦店では、建物も、映像も、流れる音楽も、すべてが「ユニクロの世界」です。いま目指しているのは、スマホで注文した服を、工場が自動でつくって届けるしくみです。
形はこれだけ変わっているのに、私たちはユニクロを「ユニクロらしい」と感じます。それは、真ん中にある哲学が一度も変わっていないからです。
5. 「服の民主化」とは何か

その哲学が、「服の民主化」です。
服は、昔から人を区別する「記号」でした。高い服を着ていればお金持ちに見え、傷んだ服を着ていれば「お金がないのかな」と見られる。服が、人の値打ちを決めていたのです。
柳井さんは、これを変えたかった。
- お金があってもなくても、誰もが同じように良い服を着られる
- 流行に流されず、長く着られる
- 主役は服ではなく、着る人
ルイ・ヴィトンやエルメスを着ている人も、インナーはユニクロ。そんな、どの階層にも属さない独自の立ち位置は、この哲学から生まれています。いまユニクロが掲げる「LifeWear(ライフウェア)」という言葉も、「生活に根ざした、すべての人のための服」という同じ考え方です。
6. 哲学は、伝え方にも表れる

哲学は、広告の作り方にも表れます。
ユニクロの広告には、文化人もミュージシャンも子どもも、同じように登場します。「私たちは民主的な会社です」とは、どこにも書いていません。それでも、見る人には伝わります。
ユニクロのクリエイティブを率いた人は、お客様の知性をもっと信じるべきだという考え方で広告をつくってきました。押しつけるのではなく、お客様が自分で気づける形で伝える。これも、哲学があるからできることです。
7. 4つの要素で見ると、ユニクロはこう読める

ブランディングは、哲学・戦略・組織・コミュニケーションの4つの要素がそろってはじめて強くなります。4つは、どれが上でも下でもなく、おたがいに影響しあっています。
- 哲学:服の民主化、LifeWear
- 戦略:SPA、旗艦店、デジタル化。哲学を実現するために、業態を変え続ける
- 組織:「売れる理由を売り場で表現せよ」。現場の一人ひとりが、哲学を形にする
- コミュニケーション:誰もが同じように登場する広告。押しつけない伝え方
そして逆に、お客様の反応や現場の声が、商品と戦略を磨き直していきます。
中小企業が、ユニクロから学べること
ユニクロのような大企業だからできた、と思うかもしれません。でも、哲学をもつことに、会社の大きさは関係ありません。
私がお手伝いしている会社でも、うまくいくのは「うちの商品とは何か」「うちの会社とは何か」を、社長が言葉にできている会社です。言葉があるから、迷ったときに戻る場所があり、社員も同じ方向を向けます。
今日からできる、3つの問い

- あなたの会社の商品は、お客様にとって「何」ですか?(「服とは何か」のように)
- あなたの会社は、世の中の何を変えたいのですか?
- 業態ややり方が変わっても、変えないものは何ですか?
よくある質問
Q. ユニクロの「服の民主化」とは何ですか?
お金や立場に関係なく、誰もが同じように良い服を着られるようにする、という柳井正さんの考え方です。服を「人を区別する記号」から解き放ち、着る人を主役にすることを目指しています。
Q. LifeWearとはどういう意味ですか?
ユニクロが掲げる考え方で、「生活に根ざし、すべての人の暮らしをより良くするための服」という意味です。流行を追うファストファッションとは逆の道です。
Q. ユニクロのブランディングで一番大切なことは何ですか?
「服とは何か」「ユニクロとは何か」を考え抜いた哲学です。哲学がぶれないから、業態を何度変えても、ブランドの軸は変わりませんでした。
Q. 中小企業でも、ユニクロのような哲学はつくれますか?
つくれます。大切なのは規模ではなく、「自分たちの商品とは何か」を社長が言葉にし、社員と共有し続けることです。
この記事の内容は、YouTubeでもお話ししています。
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