ブランドを作ったのに育たない|つくる段と育てる段は、やることが違う
ロゴを作り直した。ホームページも新しくした。会社の想いを言葉にして、社員の前で発表もした。
それなのに、1年たっても、お客様の反応が何も変わらない。
私が主宰する経営者の勉強会にも、この悩みを抱えて来られる方が少なくありません。ブランドを「つくる」ところまでは、やり切った。その先で止まっている。
先に結論を書きます。ブランドは、つくる段と育てる段で、やることがまるで違います。つくる段の道具のまま育てようとしても、ブランドは育ちません。
つくる段は、制作が中心でいい
ブランドをつくる段は、比較的、制作が中心です。ロゴや名刺、ホームページ、会社案内。それに、理念やスローガンの言葉。形にするものがはっきりしていて、締め切りがあり、完成がある。
私はグラフィックデザイナーの出身です。だから、この段の手応えはよく知っています。形ができあがった日には、ひと区切りついた実感があります。
ただ、その手応えには落とし穴があります。完成した日を、ゴールだと思ってしまうことです。
ロゴは、思い出すための引き金にすぎない

ブランドは、お客様の頭と心の中にある「感情をともなった印象」です。ロゴは、その印象を思い出すための引き金にすぎません。
引き金だけを新しくしても、思い出す中身が同じなら、お客様の頭の中は何も変わらない。電話の応対が前と同じ。納期の守り方も同じ。営業の話し方も同じ。それなら、お客様が思い出す印象も、前と同じです。
私が「見た目のブランディングは1年持たない」と言い続けているのは、このためです。
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育てる段は、戦略から組織開発まで、あらゆることをやる

では、育てる段では何をするのか。
成長という結果をつくるために、戦略から組織開発まで、あらゆることをやらなければなりません。商品開発・新規事業・マーケティング・社員教育・営業・人事考課・仕組みづくり。そのすべてです。会社のあらゆる設計を、ひとつの軸でそろえていく段です。
私はブランディングを、こう定義しています。
ブランディングとは経営の全てであり、その活動である。
つくる段だけを見ていると、この定義は大げさに聞こえるかもしれません。育てる段に入ると、この意味がはっきりします。
つくる段には完成がありました。育てる段には、完成がない。そして育てる段の主役は、制作物より人です。社員の一人ひとりが、お客様にふれる場面で何を選び、どう動くか。その積み重ねが、お客様の頭の中の印象を、少しずつ書きかえていきます。
私の言葉でいえば、シェフとキッチンの違いです。シェフは、他社と違ったことを「行う」力。キッチンは、他社と違ったものを「持つ」力、つまり組織の能力です。つくる段で整えるのは、主にシェフの腕のほう。育てる段で鍛えるのが、キッチンです。キッチンは、他社にまねができません。
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私は、お客様を急がせて失敗した
偉そうなことを書いていますが、私自身、ここで何度も失敗しています。
こちらは、すぐにお金をつくらないといけない。だから仕事を早く進めようと、提案を何度も重ねました。仕事が途中なのに「お金をください」と、お客様に頭を下げたこともあります。こちらのキャッシュフローの都合で、お客様を急がせていたのです。
やってはいけないことでした。
あのとき私に欠けていたのは、お客様が進化するスピードへの想像力です。組織には、慣性の法則が働いています。外からいくら急がせても、会社は自分の速さでしか変わらない。変わるには、経営者自身がそれを必要としなければならない。市場の大きさも、変化の速さも、すべてが関わっています。
いまは、すべての調和を図りながら、事業と組織をどう動かすか。その見方で仕事をするようになりました。
この失敗を、いまも忘れていません。ブランドは、制作物を納めた速さでは育たない。組織が動く速さでしか、育たないのです。
育たないときに、まず確かめたい4つのこと

ブランドが育っていないと感じたら、ブランディングの4つの要素(哲学・戦略・組織・コミュニケーション)に沿って、次の4つを確かめてみてください。
- 哲学:言葉にした理念を、迷ったときに社長自身が判断の物差しにしているか
- 戦略:新しい見た目にしたあと、売り方(商品・価格・売る相手)を1つでも変えたか
- 組織:社員がその言葉どおりに動けるよう、教育と評価の仕組みを変えたか
- コミュニケーション:見た目だけでなく、応対・納品・アフターまで、お客様がふれるもの全部がそろっているか
4つは、別々の作業ではありません。どれも双方向につながっていて、1つが動けば、ほかの3つも動き出します。逆に、1つが止まっていると、ほかの3つも前に進まない。つくる段で4番の見た目だけを整えた会社は、育てる段で、残りの3つに手をつけることになります。
最後に
つくる段は、いつか終わります。育てる段は、会社が続くかぎり終わりません。だから苦しい。けれど、他社がまねできない強さは、この終わらない段の中でしか生まれない。
私が「戦わないブランディング」と呼んでいるものも、育てる段の中でしか形になりません。まねのできないキッチンは、一日では建たないからです。
ブランドを作ったのに育たない。それは失敗ではありません。つくる段を終えて、育てる段の入口に立ったということです。
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