ロイヤルホストに学ぶ、理念から店までブランドができていく順番
この記事の結論
ブランドとは、お客様の頭の中に、評判と印象をつくっていく経営の活動です。ロイヤルホストの公式な沿革を並べると、理念を文字にしたのが1956年、集中調理を始めたのが1962年、郊外型の1号店は1971年でした。ロイヤルホストの1号店の前に、見えないものが15年かけて先にできていた。 私は、ブランドを、見える店と見えない土台の順番で読みます。
「ブランド構築を、何から始めればよいか」
そう調べている経営者の方に向けて、公式に公開されている沿革を、一行ずつ読みます。
1. ブランド構築とは
私は、ブランディングとは経営の全てであり、その活動であると考えています。ロゴやパンフレットを整えることは、ブランド構築の一部にすぎません。
ブランドは、お客様の頭の中にある、評判や印象や感情です。ロゴは、それを思い出すための引き金にすぎません。だから、ブランド構築は、頭の中に何を置いてもらうかから逆算して、経営のほうを整えていく活動になります。
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経営者・ブランド管理者向けThe Art of Branding 無料説明会次回勉強会のテーマ 「ブランディングに必須のアート思考とは」無料で申し込む2. ロイヤルホストの公式な沿革

ロイヤルホールディングスの公式サイトの沿革から、主なものを並べます。
1951年
できごと:日本航空国内線の営業開始と同時に、空港で機内食の搭載と喫茶営業を始める。初便の搭乗者には、風呂敷に包んだサンドイッチと、魔法瓶に入れた紅茶を提供した
1951年12月
できごと:ロイヤルベーカリー設立。「ロイヤル」の名は、「世界に羽ばたく」「王者の風格」といったイメージにつながり、創業者が英語の中で大変好きな言葉だったため、と公式に書かれている
1956年6月
できごと:「ロイヤル経営基本理念」を制定
1959年11月
できごと:「ロイヤル新天町」。ファミリータイプのレストランの原点。きっかけは、靴磨きの女性の「私も一生に一度はロイヤルで食事をしてみたい」のひとこと
1962年9月
できごと:セントラルキッチンシステム(集中調理方式)を採用し、業務用冷凍料理の製造に着手
1969年9月
できごと:ロイヤルセンターが完成。野菜の皮むきや下準備などをまとめて行う集中調理工場が誕生し、多品種・少量生産で手作り感を可能にしている
1970年3月
できごと:大阪万博のアメリカゾーンに4店舗を出店。会場内の各国レストランの中で、期間中No.1の売上を記録
1971年12月
できごと:郊外型ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」の1号店を、北九州市の黒崎に出店
経営基本理念の最初の言葉は、「ロイヤルは食品企業である。」です。続けて、「食品は美味しくなければならない」「調理・製造も取扱いも衛生的でなければならない」「サービス・販売は、お客様の心を楽しませ、社会を明るくするものでなければならない」と、3つの条件が書かれています。公式サイトは、この理念のもとで、飲食業の産業化を進めてきたと説明しています。
3. 1号店の前に、見えないものができていた
ここからは、私の読みです。
年表を、お客様に見えるものと、見えないものに分けてみます。1971年のロイヤルホスト1号店は、お客様に見えます。けれど、その15年前の1956年の理念と、9年前の1962年の集中調理は、お客様にはふだん見えません。
私は、ブランドを「シェフとキッチン」で説明します。シェフは、他社と違ったことを「行う」こと。キッチンは、他社と違ったものを「持つ」こと。シェフの腕は、見ればまねされることがあります。キッチンは、外から見えにくく、まねできません。
ロイヤルホストの1号店のメニューや店構えが、シェフです。その裏で、理念と、集中調理の仕組みと、人を育てる力が、キッチンでした。キッチンが先にできていたから、シェフは同じ品質を出し続けやすくなったと、私は読みます。見えない土台に先に時間をかけたことが、あとから広がるブランドを支えています。
4. ブランドができていく順番を、4つの要素で読む

4つの要素に、上下も優先順位もありません。ただ、ロイヤルホストの年表では、時間の流れの中で、次のように現れました。
- 哲学: 何のために存在するのか。1956年の経営基本理念が、答えを文字にしました
- 組織: 同じ方向を向いて、実現できるか。1962年の集中調理が、理念を、毎日同じ品質で出せる仕組みにしました
- コミュニケーション: お客様に、どんな気持ちを抱いてほしいか。靴磨きの女性の「一生に一度はロイヤルで」という声から、家族で行くレストランが生まれました。お客様の言葉が、事業の定義を動かしました
- 戦略: どうすれば、戦わずに選ばれるか。郊外のファミリーレストランという場所を選んだのが、1971年の1号店です
そして、1971年に店が広がったあとの経験が、また理念の言葉を磨き直します。公式サイトが、理念を70年たっても「変わらざるロイヤル」と呼んでいるのは、その繰り返しの結果だと、私は読みます。
戦わないブランディングの定義は、こちらの記事に書いています。理念と仕組みは、他社が、見ただけではまねできない独自性です。
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中小企業のブランド構築の進め方
店が1つの会社でも、進め方は変わりません。
私は講義で、これを「負けないための足場づくり」と呼んでいます。戦う前に、負けない土台をつくる。ブランドをつくるときも、お客様に見える形より先に、見えない土台が要ります。ロゴや看板は、その上にのります。
- 自社のお客様の頭の中に、置きたい評判を、一言で書く。 ロゴや色は、その後です
- その評判を、毎回支えている、お客様に見えない仕事を一つ書く。 仕込み、検品、教育、段取りなどです
- その仕事が、社長の頭の中だけでなく、仕組みになっているか確かめる。 ロイヤルの集中調理のように、です
- お客様のひと言を、記録する。 事業の定義を変えるヒントは、お客様の言葉の中にあります
- 店や商品を広げる前に、見えない土台を先に整える。
ブランド構築の出来は、店が増えても、商品が増えても、同じ評判を出せるかで測れます。
地域の中小企業のブランディングについては、ブランディング会社のページで、考え方と進め方をまとめています。
よくある質問
Q. ブランド構築と、ブランディングは同じですか?
言葉の使われ方は会社によって違います。私は、ブランディングを経営の全てだと考えます。ブランド構築は、その中で、お客様の頭の中に評判と印象をつくっていく活動を指して使っています。
Q. ブランド構築は、どれくらいの期間がかかりますか?
この記事では、期間は示しません。ロイヤルホストの公式な年表では、理念から1号店まで、15年の歩みがあります。
Q. 小さな会社でも、見えない土台は必要ですか?
必要です。会社が小さいうちほど、社長の頭の中にある基準を、言葉と仕組みにしておく意味があります。
この記事は、ロイヤルホールディングスの公式サイトをもとに、私の見方で読み解いたものです。
出典:ロイヤルホールディングス「沿革」 /同「ロイヤル経営基本理念」https://www.royal-holdings.co.jp/co/credo/ /同「変わらざるロイヤル」https://www.royal-holdings.co.jp/co/unchanging-everchanging/
計算:1956年から1971年まで=15年、1962年から1971年まで=9年(筆者)。
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株式会社オムニモスーク 代表 安田旬佑