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企業理念 例|ふくや・ホッピーに学ぶ、迷ったときに効く理念

この記事の結論
企業理念の例を、ふくやとホッピーの公式の言葉と歩みで読みました。2社とも、理念が見えるのは額の中ではありません。どちらを選んでもおかしくない日の判断です。私は、企業理念を迷ったときに戻る場所だと考えています。2社の判断を4つの要素で読み、中小企業が自社の理念を点検する方法まで整理します。

1970年、ふくやは航空便で、明太子の全国配送を始めました。1997年には、オンライン通信販売も始めています。

一方で、直営店は、基本的に地元に限っています。店頭で、対面で売る。寄せられた意見は、商品やサービスに反映させる。公式サイトの記載です。

売る範囲は、全国へ広げた。顔を見て売る場所は、広げなかった。

この会社の理念は、創業から変わらない「おいしさひとすじ」です。

企業理念の例を探している経営者の方に、言葉そのものより先に、この2つの判断を見てほしいと思いました。理念がいちばんよく見えるのは、どちらを選んでもおかしくない場面です。


1. 企業理念とは

企業理念は、会社が何のために存在するのかを示す言葉です。社是・経営理念・ミッションなど、呼び名は会社ごとに違います。

私は、ブランディングを、哲学・戦略・組織・コミュニケーションの4つの要素で考えています。企業理念は、このうち哲学、「何のために存在するのか?」に答えるものです。

▶ 関連記事:理念とは?額縁に飾るものではなく、判断と行動の基準である

2. 公式ページで読める、企業理念の例

理念が見えたのは、迷った日の判断:ふくやとホッピー

ふくや
理念の言葉(公式):おいしさひとすじ
公式の歩みに出てくる判断:1970年に航空便で全国配送、1997年にオンライン通信販売を始めた。一方で、直営店は基本的に地元に限り、店頭で対面で売る

ホッピービバレッジ
理念の言葉(公式):ホッピーでハッピーの輪をもっと。
公式の歩みに出てくる判断:2006年にラジオ番組とメールマガジン、2013年に「ホッピー大使」、2016年に「HOPPY ART LAND」を始めた

右の列は、公式サイトの沿革や企業情報のページに書かれていることです。ホッピーの言葉は、公式サイトが「理念を表す言葉」として掲げているものです。

ここからは、私の読みです。

2つの言葉は、どちらも短く、覚えやすい。けれど、言葉だけを並べても、その会社の姿は見えてきません。見えてくるのは、右の列の判断を読んだときです。

3. ふくや|広げる場所と、広げない場所を分けた

ふくやは、1949年1月10日に、明太子を初めて作って売り出しました。

売れ始めれば、店を全国に出す道もあったはずです。けれど、ふくやが全国に広げたのは、配送と通信販売でした。直営店は、地元に置いた。

逆向きに見える2つの判断が、どちらも「おいしさひとすじ」から出ている。私は、そう読みます。

全国のお客様に、おいしさを届ける。だから配送を広げる。おいしさを守るには、お客様の声を直接聞ける場所が要る。だから、顔を見て売る場所は手放さない。理念が1つだから、2つの判断がぶつからずにすんでいます。

▶ 関連記事:ふくやのブランディング|福岡の老舗が、売り始めて8年で「顔をそろえた」理由

4. ホッピー|売り場の外に、話す場所をつくり続けた

ホッピーは、1948年に発売されました。公式サイトは、ホッピーを、「割って飲む」という日本独特の飲み方、割飲料文化の先駆けとしています。つくっているのは、従業員約40名の会社です。

約40名の会社にとって、売り場の外に手をかけるのは、軽い判断ではありません。それでも、2006年にラジオ番組とメールマガジン、2013年に「ホッピー大使」、2016年に「HOPPY ART LAND」。商品を売る場所だけでなく、ホッピーが好きな人と話す場所を、ずっとつくってきました。

理念を表す言葉は「ホッピーでハッピーの輪をもっと。」です。

輪を広げる、と決めている会社なら、売り場の外に手をかける理由があります。私は、この年表を、理念の言葉が毎年の仕事になった形だと読みます。

そして、ホッピーはビールの市場で味や価格を競う土俵に立たず、「割って飲む」という別の飲み方に自分の名前を付けた。これも私の読みです。

私の言う「戦わないブランディング」は、「ヒト・モノ・カネ・情報・顧客という自社の経営資源の最大化を図り、他社が模倣できない、顧客のベネフィットとなる独自性(自社の優位性)を磨くことで、突出したブランドを構築することである。それは持続的に企業に利益をもたらす源泉でなければならない。」です。

ホッピーが好きな人の輪は、他社が明日から同じものを持てない独自性です。理念が、その輪に手をかけ続ける判断をさせました。

▶ 関連記事:ホッピーのブランディング|約40名の会社が選んだ、「割って飲む」という土俵

5. 企業理念は、額ではなく判断に出る

額の中の理念と、判断に使う理念のちがい

2社に共通するのは、理念の言葉が、迷う場面で判断の物差しとして使われていることです。

  • ふくや: 全部を広げるか、顔を見て売る場所を残すか
  • ホッピー: 売り場だけに力を使うか、好きな人と話す場所にも手をかけるか

どちらも、反対を選んでもおかしくない場面です。理念がなければ、その年の数字で決まっていたかもしれません。

4つの要素で言えば、哲学(理念)が、戦略(売る範囲と土俵)、組織(店頭で対面で売る人)、コミュニケーション(ラジオ・ホッピー大使)の判断を決めています。そして逆に、その判断を何十年も積み重ねたことが、理念の言葉の重みをつくっています。「おいしさひとすじ」が軽く聞こえないのは、顔を見て売り続けた歴史が後ろにあるからです。4つは一方通行ではなく、双方向につながっています。

社長室の額に入った理念は、迷った日に思い出されなければ、ないのと同じです。

▶ 関連記事:企業理念が浸透する会社と、浸透しない会社の違い|理念を「行動」にする方法


中小企業が、自社の企業理念を点検する方法

自社の企業理念を点検する4つの手順

会社の規模は、関係ありません。ホッピーは約40名の会社です。やることは同じです。

  • 去年いちばん迷った判断を、1つ書き出す。 値上げ、取引先、採用、出店。何でもかまいません
  • そのとき、理念の言葉を思い出したかを確かめる。 思い出さなかったなら、理念はまだ物差しになっていません
  • 理念で決めたら、どちらを選んだかを考える。 実際の判断と違うなら、理念か判断の、どちらかを見直すときです
  • 判断の理由を、社員に理念の言葉で話す。 社員が同じ物差しで迷えるようになると、理念は社長の頭の外でも働きます

企業理念は、つくった日より、迷った日に試されます。


よくある質問

Q. 企業理念と経営理念は、何が違いますか?

呼び分けは会社や出典によって揺れます。この記事では、呼び名より、何のために存在するのかを示す言葉かどうかで読んでいます。

▶ 関連記事:パーパスと経営理念の違いとは?中小企業の経営者向けにわかりやすく解説

Q. 企業理念は、長い文と短い言葉、どちらがよいですか?

この記事の2社は、どちらも短い言葉です。長さより、迷ったときに思い出せて、判断に使えるかどうかを見てください。

Q. 企業理念は、変えてもよいものですか?

この記事では、良し悪しは示しません。ふくやの「おいしさひとすじ」は、公式サイトで創業から変わらない理念として紹介されています。


この記事は、公式ページをもとに、私の見方で読み解いたものです。

出典:ふくや「沿革」 ・「経営理念」https://www.fukuya.com/company/policy/ /ホッピービバレッジ「沿革」https://www.hoppy-happy.com/corporate/history/ ・「企業情報」https://www.hoppy-happy.com/corporate/

株式会社オムニモスーク 代表 安田旬佑