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インナーブランディングの事例|資さんうどんに学ぶ、従業員への感謝を看板に刻む

この記事の結論
インナーブランディングとは、社内の人に自社の考え方を伝え、同じ方向を向いてもらうこと。資さんうどんの公式サイトによると、屋号は従業員のひと言から生まれ、ロゴの「井」の字には従業員への感謝が入っています。看板の中に、店で働く人がいる。ブランドは社内から壊れる、と私は考えています。だから、社員から始めるブランディングを、この会社の歩みから読みます。

資さんうどんの看板にある「井」の字は、創業当初から店を支えた従業員の、名字の一字でした。

会社のロゴの中に、感謝が入っています。公式サイトの言葉をもとに、ほめる気持ちと学ぶ気持ちで読みます。


1. インナーブランディングとは

インナーブランディングとは、社内の人に、自社の考え方を伝え、同じ方向を向いてもらうことです。私は、ブランディングとは経営の全てであり、その活動であると考えています。ブランドは、お客様の頭と心の中にある印象で、その印象は、社員の行動からつくられます。組織が弱ければ、哲学も戦略もコミュニケーションも実現できません。

▶ 関連記事:社員に自社ブランドを好きになってもらう方法|インナーブランディングは「体験」と「私がブランド」

2. 公式の歩みを並べる

資さんうどんの公式サイトから、主なものを並べます。

1976年1月
できごと:本社兼自家製麺工場をつくり、隣に「さぬきやうどん」本店を開店

1976年
できごと:「資さん1号店」を開業

1980年12月
できごと:会社を設立(資本金5,000万円)

2009年
できごと:地元の外への出店を始める

2012年
できごと:肉ごぼ天うどんを正式メニューにする

2018年
できごと:佐賀県へ

2023年
できごと:大阪府へ

2024年
できごと:関東へ

経営理念は「幸せを一杯に。」です。

3. 屋号は従業員のひと言から、ロゴには感謝が入っている

従業員と常連のお客様の声が看板になった:屋号、ロゴの「井」、肉ごぼ天うどん(公式サイトより)

創業者の大西章資さんは、屋号に悩んでいました。公式サイトによれば、従業員の一人が口にした「資さん」という言葉にピンときて、自分の名前を屋号に入れ、「資さん1号店」と名付けたそうです。

そして、ロゴの「井」は、ベテランの従業員への感謝を込めて、その方の名字の一字と「資」を組み合わせたものです。

屋号は従業員のひと言から生まれ、ロゴには従業員への感謝が入っている。 看板の中に、店で働く人がいます。

4. 看板メニューは、常連のひと言から

いまの看板メニューは「肉ごぼ天うどん」です。もとは、肉うどんとごぼ天うどんは別のメニューでした。ある常連のお客様が「肉うどんに、ごぼ天ものせてくれないか」と頼み、同じ注文が続いて、2012年に正式なメニューになりました。

会議室でつくったメニューではありません。お客様の声が、そのまま看板になりました。

5. よその土地でも、味を変えなかった

2009年に、資さんうどんは地元の外へ店を出し始めます。公式サイトによると、このとき「その土地のうどんの味に合わせるべきだ」という意見もありました。それでも創業者は、資さんうどんの味を貫き、各地で味が受け入れられていった、と書かれています。

出汁は、鯖節と鰹節の配合を、削り節の製造元と何度も試作を重ねて完成させたものです。その製造元とは、約40年にわたって出汁の味を育ててきました。製造元は2017年に閉業しましたが、その味は今も受け継がれています。

6. ロゴは「思い出すための引き金」──4つの要素で読む

ロゴは思い出すための引き金。その引き金に感謝が刻まれている(筆者の読み)

ここからは、私の読みです。私はいつも、ロゴはブランドではない、と言っています。ロゴは、お客様の頭の中にある評判や印象を、思い出させるための引き金です。資さんうどんのロゴが引き金になって思い出されるのは、出汁の味であり、肉ごぼ天であり、店の空気です。その引き金そのものに、店を支えた人への感謝が刻まれている。だから、物語として人に語られます。

4つの要素は、双方向につながっています。

  • 哲学: 「幸せを一杯に。」。一杯のうどんで、人を幸せにする
  • 組織: 屋号とロゴに表れています。従業員のひと言を屋号に入れ、従業員への感謝をロゴに入れた。働く人を大事にする会社だと、看板そのものが言っています
  • コミュニケーション: お客様との間で、行ったり来たりしています。常連の声がメニューになり、そのメニューが看板になり、看板を見た新しいお客様が、また同じ注文をする
  • 戦略: よそへ出ても味を変えなかったことです。その土地に合わせて味を変えれば、目の前の売上は取りやすいかもしれません。でも、合わせた瞬間に、その土地の店と同じ土俵で戦うことになります

私の言う「戦わないブランディング」は、「ヒト・モノ・カネ・情報・顧客という自社の経営資源の最大化を図り、他社が模倣できない、顧客のベネフィットとなる独自性(自社の優位性)を磨くことで、突出したブランドを構築することである。それは持続的に企業に利益をもたらす源泉でなければならない。」です。約40年かけて育てた出汁は、他社がすぐにはまねできない独自性です。それを、よその土地でも磨き続けました。

▶ 関連記事:売上で悩んでいる企業こそ必要な“戦わないブランディング”とは


自社の看板は、だれのひと言から生まれたか

自社の看板は、だれのひと言から生まれたか

会社の規模は、関係ありません。やることは同じです。

  • 自社のロゴや社名に、どんな物語があるかを書く。 由来を聞かれたときに「デザイナーが考えました」で終わるなら、そこに物語はまだありません
  • 自社の看板商品が、だれのひと言から生まれたかを、一行書き出す。 お客様の声か、社員の声か
  • その一行を、社員が自分の言葉で話せるか確かめる。 書き出した一行が、そのまま人に語れる物語になります

地域の中小企業のブランディングについては、ブランディング会社のページで、考え方と進め方をまとめています。


よくある質問

Q. インナーブランディングは、何から始めればよいですか?

まず、自社のロゴや社名、看板商品が、だれのひと言から生まれたかを書き出してみてください。社員に話せる物語があるかどうかが、出発点です。

Q. 「ロゴは思い出すための引き金」は、公式の言葉ですか?

いいえ。公式の記載ではなく、私の言葉で、私の読みです。


この記事は、資さんうどんの公式サイトをもとに、私の見方で読み解いたものです。

出典:資さんうどん「資さんうどんの歩み」 /同 会社概要 https://www.sukesanudon.com/company/profile/

株式会社オムニモスーク 代表 安田旬佑