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理想の顧客、バイヤーペルソナを手に入れろ!

今回からはペルソナの設定についてお話をしていきたいと思います。ブランディングにおいては、ペルソナの設定というものは必要不可欠です。しかし、ペルソナ設定は大切だけれど、自社には取り入れていないという方がほとんどのようです。マーケティング会議において、言葉ではペルソナといいつつもメンバーもわからないまま使用しているケースをよく目にすることがあります。

ぜひ会議の際には、あなたの会社のブランドのターゲット像がどのようなものかを一度議論してみていただきたいと思います。ターゲティングの項でも触れましたが、どんな家族構成で、どんなライフスタイルで、どこに住んでいて、大切にしている価値観はどのようなものかをチーム内で共通化させることは非常に意味があることです。

ターゲティングを行って、そこから更にターゲット像/ペルソナにまで昇華させている企業とほとんど出会ったことがありません。つまり、マネジメント層、商品開発部門、マーケティング部門が横断的に顧客像が共有できていないということになります。あなたの会社において、もしターゲット像/ペルソナが従業員それぞれ異なるという状況であれば、ブランディングにおいて一貫性がないということに繋がりませんか?また結局社内的に影響力を持つ上司の意思決定に左右されるという状況が生まれていませんか?

重要なことは、ブランディングとは顧客中心主義だということです。そのターゲット像/ペルソナが定まっていないということは、ブランディングが始まらない、つまり、顧客という起点がないゆえに戦略・戦術が立てられないといっても過言ではありません。

ペルソナに関しては、多くの文献が存在します。が、今回は、ブランディングにおけるペルソナ設定を学んでいきたいと思っています。

ペルソナとは何か?:ペルソナの意味

ペルソナとは何でしょうか?ここでは、言葉の統一を行っていきます。「persona」とは、劇などの登場人物、仮面をかぶった人格、などと訳されます。企業にとって、ペルソナは象徴的な顧客のモデルという意味合いで用いられることが多いと思います。顧客像を描くことをペルソナ設定と言われますが、当サイトではペルソナの定義を以下とさせていただいています。

ペルソナ:ブランドに対して肯定的な感情を持つファンであり、象徴的な顧客像のこと

ペルソナとは何か?:ペルソナとターゲット

ターゲットとはひと塊の「群」であり、ペルソナとは象徴的な「人物像」という意味で2つは明らかに異なります。ターゲットは「郡」や「市場」と考えることができ、規模感を図ることには有効な考え方かもしれません。ところがターゲットの根底にある価値観や心理状況を把握することはできません。一方で、ペルソナはセグメンテーションやターゲティングを行った上で、性別や年令だけではなく、ターゲットがどのように感じて、どんな価値観で、どんな未充足ニーズがあるか、そしてどんな意思決定の基準を持っているかなどを理解・推察します。

それらはプロセスの中で生まれる人物像こそがペルソナであり、より具体的にイメージできるものです。企業にとってペルソナとは、価値観やパーソナリティを捉えた人物像であり、その人物像に企業がなりきった状況で、どんな意思決定をするのか、どんなニーズを満たすことができるのかなどを検討してくために使用されます。

具体化されたペルソナという仮面を被り、ペルソナ本人になりきった上で、ブランド体験、ブランド戦略、コミュニケーション戦略を構築していきます。「企業はお客様の気持になることが大事です」と学びますが、そのための手法として、顧客の気持ちやニーズを具体的にイメージするためにペルソナという手法がしばしば用いられています。

ペルソナとは何か?:ペルソナのインサイトを知る

企業目線ではなく顧客目線に立ち、ブランド体験をイメージすることが、ペルソナ活用方法になります。ターゲット顧客が感じるニーズと企業側が想定しているターゲット顧客のニーズは乖離していると考えておかれたほうが間違いは少ないと思います。プロであればあるほど、専門的になっていき顧客のニーズと離れてしまいます。そこで、ペルソナ設定を行い、企業目線ではなく、このペルソナの求めていることにフォーカスして、あなた自身と重ね、あなた自身がペルソナになることで顧客のニーズを理解することができるのです。

インサイトとは、消費者の購買行動の深くにある、ときには本人も意識していない動機・感情などの本音です。消費者が商品を購買するときの理由や気持ちでを理解・把握することで、イノベーションを起こしたり、コミュニケーション戦略の向上になります。ペルソナには設定と活用という別々のステージがあります。設定の目的と活用の意図をぜひ理解していただければと思います。

ペルソナ設定の事例

ペルソナが秀逸な事例をご紹介します。

ペルソナ設定の事例:Soup Stock Tokyo

関東在住の方は利用されたことがあるかもしれませんが、Soup Stock Tokyoという外食チェーンの事例です。Soup Stock Tokyoは創業10年で年商42億円に上るそうです。こちらは「秋野つゆ」という架空の顧客像を設定し、彼女のニーズを満たすことができるようなマーケティングを実行しました。都心で働くキャリアウーマンの「秋野つゆ」は37歳の女性と設定され、シンプルでセンスのいいものを追求するタイプでこだわりがあり、独身か共働きで経済的に余裕があります。そして人物設定は、社交的ではあるものの、自分の時間を大切にし、人生を楽しみたいという。

Soup Stock Tokyoは、600円を超える価格設定としており、都心で働くキャリアウーマンがターゲットであるため、出店場所もオフィス街や駅チカなど、「秋野つゆ」が訪れそうな場所に出店をされているようです。ペルソナ設定は、ブランド構築に大きく影響しています。利益が見込めるからと、出店費用が安いとか、ペルソナがいそうでない場所に出店してしまうとブランドがぶれてしまいかねません。そういう意味においてもペルソナが判断軸として活躍することはご理解いただけるのではないでしょうか。

ペルソナ設定の事例:メンズTBC

メンズエステでブランドを作り出しているTBCは、ペルソナマーケティングで男性向けエステサロンへの問い合わせを増加させました。ペルソナは「都内のA学院大学に通う20歳の男性。都内の大学に通う20歳男性で、三軒茶屋のワンルームマンションにすみ、麻生のバーでアルバイトをしている。ヘアケア、ボディケア製品にもこだわりを持っている」と設定しました。

ライフスタイルからコンビニを頻繁に利用することに着目し、男性向けコスメのコンビニエンスストア販売から認知度を向上させることが功を奏し、問い合わせ数30~40%という成果に繋がりました。もちろん、ペルソナ設定をマーケティング戦略やコミュニケーション戦略にも生かされています。ペルソナが来店しやすい店作りや洗顔料や制汗剤、リップクリームなどの商品もペルソナが全てが顧客像起点となっています。

ペルソナ設定の事例:アサヒクールドラフト

2003年に「第3のビール」が登場し、泡酒の売上が年々下がっていました。そのような中、アサヒビールは発泡酒の主軸商品を作るためにペルソナマーケティングを行うために、ターゲットを週に何回か発泡酒を飲む男性30代以上の方に絞り込みました。そして、消費者インタビューを行いペルソナの作り込みが始まりました。

都内在住、年収900万円の44歳の自営業者とし、家族は1歳下の妻と長男16歳、長女13歳の4人家族。そして「自分たち向けの商品が最近出ていない」と感じている、と。その後、顧客の価値観に合ったビールとは何か?をイメージするために消費者へインタビューが行われました。

インタビューではビールに関する質問と同様、目標やライフスタイルに関する質問が重ねられました。作り出されたペルソナからは「冷たさへのこだわり」というニーズを導き出し、商品名やパッケージ開発においてもその意向が表れています。その後、大手5社の発泡酒の売上が前年同期比12.7%減の中、アサヒクールドラフトは3.7%減に踏みとど待ったそうです。

ペルソナの導き方

ペルソナ設定に取り組むためには、以下の3つの大事にしていただきたいと思います。

1、企業目線からターゲット顧客視点へ
2、ロジックと顧客インサイト
3、部分最適から全体最適

ペルソナの導き方:企業目線からターゲット顧客視点へ

ここまでご覧いただいた方はご理解いただけると思いますが、顧客の気持ちにどれだけ企業が近づけるかがペルソナの意義と言えます。しかし、ターゲットの喜ぶことを理解するためには、ペルソナ設定を用いても限界があります。その前提でどれだけSTP分析でターゲット顧客のニーズに近づけることができるかが重要です。セグメンテーションのSとターゲティングのTをこれまで紹介してきましたが、これからペルソナ設定の具体的な組み立て方を共有致します。今回はスーパーマーケットを前提の条件として考えたいと思います。

1、名前:吉田美和

2、性別:女性

3、年齢:43歳

4、職業:医療事務

5、世帯年収:900万円

6、家族構成:夫(45歳)、長男(14歳)、長女(9歳)

7、居住地域:練馬区

8、住居形態:賃貸マンション

9、移動手段:電車

10、情報収集:スマートフォン

11、趣味:料理

12、不満・不安・不便:珍しい食材にトライしてたいけど、金額的に躊躇してしまう。

13、幸せを感じること:新しい味の発見を家族と共有すること

14、典型的な平日の過ごし方:仕事を定時に切り上げて、軽くお酒を飲みながら夕食兼つまみをゆっくりとつくること。手間のかかる料理も嫌いではない。お酒とのペアリングにも興味を持っている。

15、典型的な休日の過ごし方:外国の食材を長女と一緒に探しにでかける。情報収集は主にクックパッドと著名な料理研究家やシェフのレシピブック。

16、ペルソナのストーリー:ペルソナは料理のことにとても興味を持っている。本人が小さい頃から母親と一緒にスーパーマーケットで探検することが好きだったという思い出を持っていて、食材に囲まれる体験をこよなく愛する。医療事務の同僚とも食の話題が多い。ソーシャルメディアでのきれいな盛り付けを見ることも好きで、自分が料理を通じて表現することが性に合っていると思っている。とくに家族が色んな国の料理を食べることに関心も有り、家族との時間が本人の料理へのモチベーションにもなっている。スーパーやデパ地下には週に3〜4回通う。セール品を見つけることも楽しいと感じているが、季節の惣菜を見ながら自分の発想をふくらませることにもワクワクする。食品の添加物には敏感で、家族には安全なものを食べさせたいと考えている。料理には自信があるので、多くの人たちにも食べてもらいたいという夢も持っている。

17、ペルソナを一言で表現すると:凝り性の自宅シェフ

さて、大事なことは、①ペルソナの感じている気持ちを探り、②商品サービスをどのように適合させるかを考えます。この順番はターゲット顧客視点になるという意味で欠かせない考え方です。あなたがスーパーマーケットのマーケティング部門の意思決定者だとしたら、どのような商品・サービスを考えますか?たくさん発想できるほど、ペルソナにとってはあなたの店舗が魅力的に映す確率が高まるでしょう。

例えば、毎週水曜日は、海外料理レシピプレゼントの日と設定し、レシピカードと食材がどこにあるかまでをお伝えしてあげることは、ターゲット顧客の「新しい味に出会いたい」というインサイトを満たすことができそうですね。そして、アプリの中で情報をストックしていけば、ターゲット顧客をスーパーマーケットのコミュニティに導くことができるかもしれませんね。

また別の切口でいえば、スーパーマーケットの担当者がどこかに買付に行く際に、事前の予約を促すこともできるかもしれません。今月はパリへ日本未発売のトリュフ関連の調味料を仕入れに行き、来月はイタリアに様々なソースを仕入れに行くなど、事前に知らせることができるとなると、ターゲット顧客はどのように感じるでしょうか?「このスーパーマーケットは、いつも興味深い体験をさせてくれる」と感じるのではないでしょうか。

つまり、このような積み重ねを行うことでペルソナにブランドを構築させることができると想像できませんでしょうか。結果として、ペルソナ以外にとっても面白いサービスとして受け入れてもらい、独自の強みを作り上げていくことができるのです。いかがでしょうか。

1、ペルソナのインサイト

普通の美味しいだけではなく、出会ったことのない味を追求したい。食への興味・関心が非常に高い。

2、ペルソナに促したい次の行動

ペルソナの期待以上の味わいを家庭で作らせる

3、ペルソナに期待するスーパーマーケットへの連想

私をインスパイアする食材の宝庫

4、ブランドビジョン

食の新しい体験をご家庭に

いかがだったでしょうか。企業目線からターゲット顧客視点へと発想の起点を変えるだけで、新たなサービスや強みの創出につながることがご理解いただけましたでしょうか?企業はペルソナの感情や期待に応えることができれば、新規事業も新たなサービス創出も怖く有りません。大切なことは、ターゲット顧客視点になれるかどうかです。ペルソナはそのための大きな手段とご理解くださいませ。

ペルソナの導き方:2、ロジックと顧客インサイト

あなたは、「身元の分かる被害者効果」という理論を聞いたことがありますか?顧客ターゲットがブランドを選ぶ基準というものは、必ずしもロジカルとはいい切れません。彼らは合理的な理由でブランドを決めることもよりもむしろ感情で購買の意思決定をしています。ブランド戦略とは、ターゲット顧客に良い印象を持ってもらい、感情移入してもらうことを目指しています。

「身元のわかる被害者効果」というものは、被害者が「特定可能な個人」である場合に、そうでない場合と比べて、はるかに強い反応を人々が見せる傾向にあることを示唆すると言われています。この理論の提唱者が、慈善活動を行っていた際に、一人の飢えた子供の写真を見せられた人は寄付へ気前の良さを示したのに対し、アフリカ全土の飢餓に関するデータのリストを見せられた別グループは寄付額がおよそ半分だったそうです。

別の例えで言えば、スーパーマーケットに農家の写真があり「私が作りました」といったコメントがあると、ついそちらの商品を手にとってしまうという経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。きっと自分ごとのように感じてしまいやすいのでしょうね。

また人の脳みそというものは、3層構造になっていて外側から内側にかけて、考えるための人間脳、感じるための哺乳類脳、生きるための爬虫類脳という順になっており、合理的に考えるよりも感情的に感じるほうが無意識のうちに優位となります。よく衝動買いという言葉を聞くことがありますが、これもどちらかといえば、人間脳よりも哺乳類脳や爬虫類脳が機能していると考えられます。

ストーリーテリングという手法も顧客ターゲットに響きやすいのは、やはり感情に訴える力を持っているからです。ペルソナ設定とは、そのようなターゲット顧客の気持ちを感じることで顧客の気持ちを理解し、あなたの商品・サービスに直感的な視点を持つことができるようになるのです。

ペルソナの導き方:3、部分最適から全体最適

ペルソナ設定に取り組む場合は、部門を超えて取り組む必要もあると思います。そのようなときに大事なことは、個人的な利害は一旦脇に置いておくことです。ただし、部門を超えるという意味では、多様性のある意見を交流させることが大事であるので、積極的に関わっていただきたいと思います。

製造部が直接顧客をイメージしにくいかもしれません。また、営業部は顧客をイメージしていても具体的にものを作ることができません。一方、マーケティング部門や管理部門は、広告予算や経費に対する視点を持っていることでしょう。それぞれの視点が交差するからこそ、ペルソナのインサイトを感じ、喜んで購入していただくまでの製造販売経路を構築できるのではないでしょうか。

ペルソナとはどこかの部署がこうですという事もできますが、個よりも全体として顧客像をイメージしながら取り組んで頂くことでその先に存在する施策に一貫性が生まれてくるはずです。

ブランド戦略を成功させるペルソナ項目の設定方法

ここでは、ペルソナ設定するための手順をお伝えしたいと思います。ペルソナで考えるべきことは、2つ。

・ペルソナ設定のための属性リストはどのようなものか?
・ペルソナ設定の具体的進め方はどのようなものか?

であろうと思います。ペルソナ設定の前にセグメンテーションを思い出していただきたいと思います。

・地理的変数によるセグメンテーション(ジオグラフィック変数)
・人口動態変数によるセグメンテーション(デモグラフィック変数)
・心理的変数によるセグメンテーション(サイコグラフィック変数)
・行動変数によるセグメンテーション
・固有変数によるセグメンテーション

これらからセグメンテーションを行い、ターゲティングも解説いたしました。その中から群としてのターゲットが設定できます。そしてターゲットの中からさらに一人に絞り込んでいくというものがペルソナとイメージしていただければと思います。

ペルソナの属性リストとしましては、

1、氏名、性別、年齢、家族構成、年収、世帯年収、貯蓄、資産、居住地、職業、住居形態などのペルソナの一般的属性
2、個性、性格、価値観、こだわり、好き、嫌い、自己認識、幸せに感じること、不安、不満、不便、不快などのペルソナの個性や考え
3、ファッション、働き方、遊び、食、住、乗り物、学び、美、子育て、教育、健康、平日の過ごし方、休日の過ごし方などのライフスタイル
4、コミュニティ、社会的なステータス、活動など周囲との関係性
5、情報源、ソーシャルメディア、好きな著名人、情報感度、デジタルリテラシー、メディアなどの情報取得
6、自社ブランドに対する態度、競合ブランドに対する態度、類似商品に対する態度などブランドとの関係性

このようにセグメンテーションとターゲティングを活用して、ペルソナを作り上げていくことができます。そしてペルソナの個性や生活をストーリーテリングをしておくと、よりキャラクタが見えてくるようになります。

ペルソナは複数になることもあるでしょう。ビジネスモデルが多様化していて、ペルソナが5人、10人にもなって、ごちゃごちゃになった感じたらどうぞ絞り込んでみてください。ペルソナの写真もお忘れなく。

ペルソナ項目の設定方法のポイント

ペルソナを設定するためのポイントをお伝えします。

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・ペルソナの「好き」「嫌い」「幸せに感じること、」「不安、不満、不便、不快」などを考え、自社ブランドとの接点を考えてみます。

・「平日の過ごし方」「休日の過ごし方」などは、顧客とのタッチポイントの設計となるブランド体験のヒントとなります。

・ペルソナは具体的に細部を描くことも大切ですが、あまりこだわりすぎるのはマーケットを狭めてしまう可能性があるのでご注意ください。

・具体的なペルソナを描くためには、顧客をどれだけ知っているかが重要と言えます。日々の接客、コールセンター、アンケート、グループインタビューなど事前の情報収集は欠かせません。

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ペルソナのストーリーが大切な理由は、ペルソナ設定の本来の目的がターゲット顧客の感情移入を促すためでした。ブランディングのためには顧客にファンとなっていただくことが大事なので、その顧客がどのように感情に変化を起こし、どんな価値観を養ってきたかをあなたは知る必要があります。そこで、参考事例にも挙げたペルソナのストーリーが以下でした。

「ペルソナは料理のことにとても興味を持っている。本人が小さい頃から母親と一緒にスーパーマーケットで探検することが好きだったという思い出を持っていて、食材に囲まれる体験をこよなく愛する。医療事務の同僚とも食の話題が多い。ソーシャルメディアでのきれいな盛り付けを見ることも好きで、自分が料理を通じて表現することが性に合っていると思っている。とくに家族が色んな国の料理を食べることに関心も有り、家族との時間が本人の料理へのモチベーションにもなっている。スーパーやデパ地下には週に3〜4回通う。セール品を見つけることも楽しいと感じているが、季節の惣菜を見ながら自分の発想をふくらませることにもワクワクする。食品の添加物には敏感で、家族には安全なものを食べさせたいと考えている。料理には自信があるので、多くの人たちにも食べてもらいたいという夢も持っている。」

いかがでしょうか。例えば、医療事務と食という背景から食の安全性や添加物への配慮などは、日頃から取り組んでいるのではないかと考えられたりできますね。ペルソナにとって、食というものが非常に大切な心のポジションを占めていることも想像できます。つまり、このペルソナにとって食は、知らない世界への入り口でもあり、自己表現の場でもあるわけです。このようにペルソナを活用して、ターゲット顧客の感情や価値観に共感することで、あなたの商品・サービスに何が求められているかをうかがい知ることができるようになるのです。

ペルソナのビジョンについて

ここまででいかがだったでしょうかペルソナの導き方をご理解いただけましたか。さて、ここでは、いよいよペルソナの思い描いている理想を設定してみましょう。ペルソナが実現していきたい社会や未来を導き出し、あなたがペルソナの顧客体験を設計していけるようになります。

ここでのペルソナは、43歳の医療事務の吉田美和さんでした。「食品の添加物には敏感で、家族には安全なものを食べさせたいと考えている。料理には自信があるので、多くの人たちにも食べてもらいたいという夢も持っている。」このように吉田さんというペルソナは、自身が培ってきた料理の腕前をどこかで披露したいと考えています。

それは、ホームパーティのようなものでしょうか?それともインスタグラムで写真を上げたりしてレシピ公開などでしょうか。このようにペルソナを考えることで、いえ、感情を伴ったペルソナ視点そのものになることで、新たな事業の創出の可能性へとつながっているのです。

ペルソナのまとめ

いかがだったでしょうか?ペルソナの本質をご理解いただけましたでしょうか?ペルソナは顧客の目線になりきるためのものです。掲げるものではなく、ペルソナ本人になりきって会社目線とは違った目線を持つために利用するものです。そして、感情も含めてペルソナになりきることがペルソナの活用方法です。

余談ですが、私個人的に商売がうまくいかない時に、ソフトバンクの孫さんならどう考えるかな?とかユニクロの柳井さんならどう考えるかな?と自分でない他人の視点を持つことを習慣にしていました。ペルソナというものは相手の立場で考えることができるきっかけですし、自分自身を客観的に知るきっかけでもあります。

ペルソナは社内を横断的に巻き込んで設定し、活用することでブランドの新たな商品やサービスの開発にも使えるフレームワークですので、セグメントからターゲット設定の流れはぜひとも習得していただきたいと思います。