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ブランド戦略とは:ブランド戦略のメリット
ブランド・ブランディングの定義
あなたはブランド・ブランディング・ブランド戦略の違いを明確に語ることが出来ますか?日々の業務の中では、これらが混ざってしまっているのではないでしょうか。まずは、ブランドとブランディングを明確に定義することから始めたいと思います。
弊社ではブランドをこのように定義づけています。「企業/商品/サービスが、購買者/非購買者に対して与える心象そのもの。」つまり、購買者の感情移入を引き起こし、愛着心を育てる影響力を持つものです。ブランディングとは、「企業/商品/サービスに対し、購買者/非購買者が持っている心象を醸造させ、それらに感情移入を引き起こし、愛着心を高めてもらうための活動のこと」です。
ブランドとブランディングについては、何度か触れてきましたので、ご理解いただける方もいらっしゃると思います。今回はこれらに加えて、ブランド戦略についてお話したいと考えています。
ブランド戦略の定義
日本において、競争優位を構築することはなかなか困難なことではないでしょうか。私はニューヨークでのビジネス経験との比較ができるため、ニューヨークで会社設立前の自分自身を想像しています。当時はどこでもウェブサイトは制作できますし、グラフィックデザインも当社より優れた会社はたくさん存在しました。そこで感じていたことは、差別化も出来ず競争優位性を発揮することも出来ずで焦りばかりを感じていました。
数カ月先の売上を心配しながら、従業員さんを食べさせていくだけで必死でした。商品力も弱い、社員も育っていない、ないことだけに視点がいっていました。価格競争力もないために、競合他社に比べていい商品をリーズナブルに提供するということが困難に感じていた時期でした。しかし、今時間を経て当時の自分自身に言えることは、「戦略を立てて遂行すること」と伝えたいと思います。
現在当社においては、様々な企業のサポートを行いつつも、食に関わる企業、つまりレストラン、ホテル、農業などに自社の強みを発揮しています。その結果何が起こるかというと、戦うフィールドを絞っているためその業界のことを勉強して詳しくなり、美味しいレストランに行くなど食に関する経験を増やしています。そして、結果として当社にお願いしたいといわれる方が増えてきています。
私たち中小企業は、戦略を立てることも勇気を必要としますし、遂行するには力が必要です。そのため、戦略の実施そのものが曖昧になってしまいがちです。だからこそ多くの方にブランド戦略の思考法と実践力を応援したいと考えています。あなたはいかがでしょうか。何か同じ経験をされている方であればぜひブランド戦略に取り組んでいただきたいと思います。
さて、ブランド戦略の定義については、私は博報堂の定義をお借りしたいと思います。博報堂の定義は以下になります。
「ブランド戦略(Brand Strategy)とは、対象となる事業領域において、持続的な競争優位性を構築することを目的に、ブランドを効果的に強化していくための企てのこと。」
ブランド・ブランディング・ブランド戦略、この3種の違いを基本としてこの項は進んでまいります。
ブランド戦略の役割
あなたの部下や上司は、ブランド戦略をどのように捉えているでしょうか。
- ブランド戦略は大手や高級ブランドにしかできないことで、自分たちにブランドは関係しない。
- いい商品を作りさえすれば、ブランド戦略などは必要ない。
- ブランド戦略はマーケティングのことであり、多額の予算が必要である。
私は広告業界・コンサルティング業界において20年以上の経験を積んできました。当時は制作現場一本だったため、明確な定義も持ち合わせていなければ、上記の通り大手や高級ブランドのことをブランドと呼んでいました。ところが、ニューヨークでビジネスを行うことになった2013年から、ブランドに対する概念が変わってきました。
ブランド戦略とは、マーケティング活動よりも高次元の戦略であり、同時にマーケティング活動の司令塔的な存在でもあります。マーケティングの権威フィリップ・コトラーは以下のように語ります。
「マーケティングの技術はブランド構築の技術そのものである。もし、あなたが提供しているものがブランドでなければ、それはコモディティにしかすぎない。そしてコモディティの世界では価格こそがすべてであり、低コストの生産者が唯一の勝者となる」 フィリップ・コトラー
つまりブランド戦略は、マーケティングの上位概念ということがご理解いただけるのではないでしょうか。ブランド戦略はブランドを強化するための企てのことであり、それ以上でもそれ以下でもありません。ブランドを活かしどのように戦場で戦い生き残っていくか、それこそが企てでありブランド戦略となります。そのためブランド戦略とはまさに差別化戦略のことであり、ブランドプロポジションを強化し競合他社がシェアを持っていないマーケットでどのように消費者のマインドシェアを奪うかを企てることそのものと言えます。
変な日本語になるかも知れませんが、「ブランドの差別化を企て(ブランド戦略)、実現させる(ブランディング)」。回りくどい表現になりましたが、ブランド戦略はそのような意味合いとなり、ライバル企業の中に埋もれないための戦略と言えます。つまり、ブランド戦略が確立して戦略が実現すると、あなたの商品・サービスが際立ってターゲットに見つけてもらいやすくなるという利点が生まれます。
ブランド戦略の狙いと効果
ここまで読み進めていただけると、ブランド戦略が何かはご理解いただけたのではないでしょうか。今からは、ブランド戦略の狙いとその効果を解説していきたいと思います。
ブランド戦略の狙いとは、つまり、ブランドで何を実現したいかということです。ブランド戦略の狙いといっても、一般的に明確な目的がわからない方がほとんどでしょう。そのため社内において、なかなかチームを引っ張って行けないというのが現状がよくあるお話です。
ブランド戦略を語るには、その狙いと効果を理解しなければならないことは言うまでもありません。ブランドには、それがそれであると認知させ、識別させるという機能を持っています。その機能があるからこそ、以下に続く狙いを企業は持つことができるのです。
その狙いとは、以下のように挙げることができます。
- 認知度の向上と販売力強化
- 価格交渉力
- ファン化とリピート化
- 広告宣伝コストの削減
- 事業拡大の機会創出
- パートナー企業創出
- 仕入れコストの削減
- 人材採用力の向上
- 従業員のファン化
- 資金調達力の向上
10→1の方向に向かって、バリューチェーンをイメージしていただけるはずです。つまり、ブランド戦略は事業全体に大きな効果をもたらし、資金調達、人材獲得、商品開発、広告宣伝、マーケティングという全行程にプラスの関与をしていることが理解いただけると思います。
企業にとって課題はそれぞれです。しかし、原理原則を考えると、どんな企業でも多くの課題を共通に抱えていることは容易に考えられます。ブランド戦略を実施し、ブランドを積み上げていくことが将来的にいかに企業にメリットをもたらすかを共有したいと思います。
認知度の向上と販売力強化
当然のことながら、私たちは知らないものを欲しいと思うことはありません。一方で、ある商品のファンと呼ばれる人々は、その商品のことを隅々まで知っています。歴史やエピソード、職人と知人になってしまっているファンもいるかも知れませんし、その会社の限定サービスを受けている可能性だってあるかも知れません。また、例えば、知らなかった漫画を付き合い始めの彼女が昔から大ファンで、その影響を受けて今では彼氏のほうがその漫画のファンとなってイベントにも参加してしまうという現象が起きたりするケースもあると思います。
ポーランドの社会心理学者は単純接触効果と言って、繰り返し接すると好意度や印象が高まるという効果があると発表し、ザイアンスの法則といわれています。また対人関係については熟知性の原則といわれています。広告の効果というものは、単純接触効果によるところが大きいとされています。露出が多いほど単純接触効果が起きて、よい商品だと思ったり欲しくなったりするのです。
昨今では、ソーシャルメディアの隆盛もあり、知人から紹介されたお店や商品が気になるといった経験をした方も多いと思います。まさにこれは、同様の作用が働いており、ブランド戦略においてどれだけ認知されることが大切か裏付けるものになっています。
価格交渉力
みなさんは利益感度という言葉を聞いたことはありますか?また売上が上がると変動費も上がると信じていませんか?実は、売上単価を下げることが最も利益に影響を与えることはご存じの方もいるかも知れません。売上とは、「販売単価✕販売数量」です。
1つ目の質問について、会社が利益を上げようと考えると、売上を上げよう、変動費を下げよう、固定費を下げようとなりますね。ここでは細かくは説明を省きますが、利益に最も影響を与えるものは、売上になります。その中でも販売単価になります。この販売単価を下げることが利益を最も圧迫します。逆に利益を上げたければ、この販売単価を上げる努力をしなければなりません。
そして、2つ目の質問に対してです。この販売単価が上がったり下がったりして、売上が上がったり下がったりしても、変動費は販売数量が変わっていなければ変動しません。つまり、変動費というものは販売数量に紐付いており、販売単価が上がったり下がったりする分には影響を受けません。
そのため、企業は販売単価を上げる努力をしなければなりません。これは1つの戦略ですので、他にも優れた戦い方はありますが、販売単価が会社の利益に「最も」つまり「1番」影響することをご存じない方が非常に多い。そこで、ブランド戦略が大事になってくるわけです。他にも同じ商品が世の中にあるものは、競争が働くため必然と価格は下がってきます。
しかし、世の中の金額の高い商品は、オンリーワンの会社が多いと思いませんか?ランボルギーニ、エルメス、ブランパンなどオンリーワンのブランドを作り上げることが会社にとって消費者との価格交渉力にはプラスの影響力を持つのです。これらのブランドは、もともとハイブランドだったわけではありません。いずれの会社も中小零細企業だったのです。
ハイブランドを目指すというのではなく、ブランドを高めるということは、良い商品を購入したいと思ってもらえるファンを作ることができるのです。安く販売するという戦略も重要ですが、ブランドを高めることで価格交渉力が強化できるということもぜひ念頭にお持ちいただければと思います。
ファン化とリピート化
あなたの事業において長期的なビジネスを展開するために、リピート力の強化は欠かせないものでしょう。新規顧客とリピート客の顧客獲得コストは5倍の差があるといわれています。そのため、新規顧客をリピート顧客にどれだけ転換させられるかということがビジネスにとって大変重要な要素になります。
しかしあなたの商品・サービスは、同業他社も近しい商品・サービスを提供しているのではないかと思います。そのため、ブランド戦略、つまり差別化戦略が無ければ同業他社と泥沼化した戦いとなってしまいます。もし、競合他社があなたの会社より優れた商品・サービスを提供しだしたならば、あなたの会社にとって危険信号となります。
そこで必要な考え方がブランド戦略です。ブランド戦略(Brand Strategy)とは、「対象となる事業領域において、持続的な競争優位性を構築することを目的に、ブランドを効果的に強化していくための企て」のことでした。ここで考えるべきことはどのようにお客様をファン化させるかです。ブランド戦略において、消費者からどれだけ感情移入してもらえるような商品・サービスになっているかを深く振り返る必要があります。
それは会社の根本的な考え方である理念を変える必要があるかも知れません。また商品のパッケージを新たにする必要があるかも知れません。もしかしたら長期的な社風の改善に取り組まなければならないかもしれません。目指すべきは、ブランド戦略を通じて消費者の感情移入を作り出しファンとなってもらい、リピート購入をしてもらえることを実践していただきたいと思います。
広告宣伝コストの削減
企業によっては、広告宣伝費の割合が高い会社もおられることと思います。広告宣伝活動は大変重要なものではあります。しかし、先日大手広告会社の方ともミーティングしましたが、広告の効果測定というものはなかなか計測が難しいといわれていました。確かに私自身も計測を行っていますが、どれだけ時間をかけても明確な答えを出すことは本当に難しいと感じます。
オンラインの広告であれば、数値化できますので、仮説と検証が立てやすいでしょう。しかし、テレビや紙媒体などのクロスメディアとなれば、相当の予算枠を持っていなければ効果測定は難しいだろうという結論に至っています。
さて、広告の狙いというものは、いくつかあります。
- 認知度を高める
- 購入を促す
- 再購入を促す
これらを達成するために、それらのツールも媒体も様々存在します。マーケティングファネルで考えてみますと、認知>興味関心>比較検討>購入>リピート>ファンという大まかな流れがあります。ブランディングは全てのステージをハンドリングしなければなりません。それぞれの数と率を高めていくことを考えていくわけですが、購入後のファンになるためにはクロージング率や商品・サービスの品質の高さが求められます。
このファネルで最も資金が必要なところは、認知の部分になります。しかし認知を高めることだけをやっていても、顧客が感動しなければ購入に至らず、どこかのステージで離脱してしまいます。そうなるとさらに認知を増やそうとしてしまい、余計なコストが掛かってしまい、結果的に経営を圧迫してしまいます。
その際に何を行うべきかと言えば、全ての顧客接点時のブランディングです。ブランディングの1つのゴールはファンとなってもらうことです。各ステージの推移率を高め、リピートを獲得できれば、毎月毎月購入してもらい、また新規のリピーターも増えることで安定的に収益を高めることができます。その結果、広告予算を拡大すること無く、人を育てることが経営を高めていくことにつながるのだとご理解いただけるかと思います。
ブランド戦略とは、全社的に取り組んでいくものです。広告担当者だけではなく、各現場現場の従業員さんが自らが会社のブランドの体現者、つまり経営理念の体現者でなければならないことを強くお伝えしたいと思います。
事業拡大の機会創出
一旦ブランドが構築されると、ブランド拡張という展開を考えやすくなります。ブランドアンブレラ戦略と呼ばれ、1つのブランドから派生ブランドを作る手法や、個別のブランドを育てていくマルチブランドというものなど、ひとつのブランドを軸として新たなブランドを確立させることができます。
私は、ナイキの上下セットアップを身に着けながら、足元がアディダスではなんとなく違和感を感じてしまいます。せっかくならばナイキのシューズを履きたいと思いますし、その方が自分を表現できる気がします。つまり、ブランドのファンになった消費者は同一ブランドをもっと欲しくなってしまうものなのです。これが逆に企業からすれば次のビジネスの種になるわけです。
消費者には様々なニーズが人それぞれに存在します。ブランド拡張に取り組んでいけば、今まで顧客ではなかった消費者を取り込むことも可能となります。もう今は立派な大きな会社になりましたが、ラーメン店の一風堂もまさにブランドの拡張に成功しています。
同社は「一風堂」というブランドを軸にして、コンビニやアパレルブランドとコラボして様々なブランドの展開を行っています。ブランドの拡張といえば、IPPUDO RAMEN EXPRESS、TOKYO TONKOTSU BASE、赤丸、白丸、KUROOBIなどまだまだたくさん列挙できます。
一風堂のブランド拡張が素晴らしいのは、全てが一風堂であると分かる人にきちんとわかるという点です。きっと多くの方が、ブランドを体験したあとに、「あ、やっぱり、一風堂だったんだ」と感じる方も多いのは、ブランドの軸がぶれていないからなのでしょう。挑戦的で、業界の雄という強い自信の表れだと思います。
ブランドの拡張にはいくつかのパターンがありますが、一風堂とは異なり、それぞれのブランドが同一の会社と思わせないパターンもあります。その代表として挙げられるものがP&Gです。ファブリーズとSK-Ⅱが同じメーカーの商品だとはあまりご存じない方が多いのではないでしょうか。ボールド、レノア、ジレット、パンテーン、プリングルス、ラコステなどもP&G(日本/アメリカ)です。それぞれのブランドが確立されていて、独立してブランドを作り上げているケースもブランド拡張の一例です。
いかがでしょう。ブランド戦略において、ブランドの拡張が事業拡大の機会となることをご理解いただけましたでしょうか。ブランド拡張が多角的な経営になってしまい、経営を圧迫することとは目的も意味も違いますのでお間違いないように。
パートナー企業創出
ブランド戦略の狙いと効果、その6は「パートナー企業創出」です。このパートナー企業創出については、2つの意味があります。1つ目は協業できるパートナー企業で、2つ目はブランド価値を高めてくれるパートナー企業です。
まず、最初のパートナーに関しては、自社に足りない能力を他社から補う、補完的な役割です。そのパートナーの事例としては、例えば、ナイキやアディダスが最近、縫い目のないシューズを販売しているのはご存知でしょうか?ユニクロも縫い目のないカットソーなどを販売していますね。それらは、島精機製作所という会社が作っている機械によって、縫い目のない生地や洋服を作る技術が用いられています。
このようなパートナーシップというものは多くの企業間で行われており、最近では、大企業がベンチャーと組んでイノベーションを起こしている事例がたくさんあります。ブランド戦略とは、このように企業連携の可能性を広げることができる手段であります。
2つ目のブランド価値を高めてくれるパートナー企業という意味については、一風堂の取り組みが良い事例です。アウディやマーベルなどとコラボイベントを行い、今までファンではなかった層にアプローチすることに成功しました。また、これらのハイブランドと組む一風堂へのイメージも変わってくるわけです。
メディアの関心も高まり、いろいろな媒体で露出もされ、ラーメン屋から一風堂というブランドを体験させるお店に変貌したと言えるのではないでしょうか。特に海外の人々にとっては、一風堂でラーメンを食べたという経験が1つのステータスにまでなるという現象まで起きています。
もし自社のブランドがまだまだ弱いと感じることがあれば、連携することで1つの活路が見えるかも知れません。お金をかけたマーケティングだけがブランディングではないということもご理解いただけると思います。ぜひクリエイティブな発想で色々と取り組んでみてください。
仕入れコストの削減
このテーマは当たり前とも言えるメリットになりますが、ブランドが高まれば商品の販売数も増え、取引数が増えると価格交渉力を持ち、商売を有利にすすめることができます。また同時に、新規の仕入先も取引をしてほしいと言われると思いますし、仕入れコストの見直しも可能となるでしょう。
これはブランドの副産物のように聞こえるかも知れませんが、人の印象はどこでどのように生まれているかはわからないものです。私はチョコレート屋さんではありませんが、チョコレートのドキュメンタリー映画を制作したことにより、海外の優良なカカオ生産者から連絡があり、良いカカオを安価で販売してもらいたいと声をかけられたりしました。
これは、カカオとチョコレートの業界の人に、またはそれ以外の人に私がチョコレートのプロのようにブランディングされているからだと思います。ブランディング、映像、WEB、システム開発などのプロではありますが、チョコレートのプロでは有りません。本当によく間違われます。チョコレートを持参しなければがっかりされます。人の受け取り方というものは、本当に面白いものですね。
話はそれましたが、みなさんのブランディングが成功すると思いも寄らないメリットが受けられ、関わりたいと思う方も自然と増えてきます。その中にはあなたに原材料や商材を買ってもらいたいという方もいるでしょう。ブランディングは100%コントロールできるものではないかも知れませんが、以上のようなことも十分起こり得ますので、ぜひ期待していただきたいと思います。
人材採用力の向上
昨今、様々な場面で人材が不足していることを耳にします。人材派遣やヘッドハンティングの会社が活躍しているのは、そのような背景があるからではないでしょうか。
さて、ここでは人材を獲得するためにはやはりブランド戦略が必要であり、ブランドを高めることで、人材へ会社の姿勢や考え方をメッセージとして伝えることができるようになることをご紹介します。ここでの人材は、ただの人という意味では有りません。企業側は誰でも採用したいのではなく、本当に優秀な人材を求めています。
現状はどうかというと、中小企業は人材の獲得を諦めてしまい、とにかく人を獲得しなければならないという状況があり、考え方の合わない人を雇用することでバイトテロのような不祥事を起こしてしまっています。そして、ブランドを下げるという負のスパイラルを生み出してしまっています。本当に悲しく、残念で、情けないと感じてしまいます。
そのような社会環境の中で事業者は経営を考えていかなければならず、ブランドまで意識がむいていないということを肌で感じています。私達にできることは、プラスな印象を与えられるブランドへと高めていくことだと思います。
そこで、参考にしていただきたいことは、ディズニーやスターバックスがなぜファンが多いのかということです。2社の表面的なことはアウトカムとして目に触れるものなのですが、ブランド戦略とは見た目の問題ではなく、会社としての考え方や思い、こだわりといったものが目に見える形になったのであります。あなたが本当に注目すべきは、その考え方や浸透の仕組みに対して意識を向けるべきなのです。
人材は確かにアウトカムに触れて、あなたの会社のことを知るはずですが、会社の考え方がなければアウトカムは存在しません。人材獲得はブランド戦略の結果として有利になりますが、ぜひ会社としての考え方を今一度振り返っていただき、それをどのように表現するか、というこの2軸を大事にしていきたいものです。
従業員のファン化
企業が経営を良くして、上場を目指す理由の1つに従業員がもっと会社を誇りに思ってほしいからという答えを耳にします。経営者は従業員に本当に会社を好きになってもらいたいと思っているし、従業員もその期待に応えようと一生懸命仕事をしてくれます。
会社が上場するというのは、1つのブランド価値を高めるためには決定的な手段であり、多くの注目と信用を集めることができるようになります。ここでは読者に上場を促したいのではなく、このような明らかな環境の変化を生み出すことは確かにブランドに貢献するでしょう。
しかし、すべての会社が上場できるということはなく、従業員がもっと働きやすい環境を整えたり、仕事への喜びを感じることができるようになれば自ずと会社のことを大事に思ってくれるようになるはずです。ブランド戦略はまさにそうで、会社のブランドを高めるということはあくまで結果であり、そのプロセスでは会社の経営を良くして、良い商品を生み出し、世の中により良い価値を提供しなければなりません。そのプロセスの中に従業員さんのやりがい、同僚との絆、商品への愛情など全ての活動が従業員さんの愛着心を育んでいきます。
その最も重要な前提となるものは、会社の考え方と在り方です。会社の目的がお金儲けのためであれば、従業員さんは疲弊していきます。しかし、会社の存在は従業員の幸福のためとなれば、従業員は仕事に励んでいくことができるでしょう。経営者自身も哲学として従業員さんを大切にすると謳っていたとしても上限はないわけですから、哲学を高め続けることに向き合わなければなりません。
不況も来ます。想像もし得ない災害に見舞われることもあるかも知れません。資金繰りが大変な時期もあるかも知れません。どんなときでも従業員を大事にするという哲学が行動に現れており、周りからの理解を得られているのであれば、会社は自ずとブランドを高めていけるのではないでしょうか。文章で説明することと、会社の現状では、全く異なります。多くの会社のブランドを高めるということが従業員さんの支持を得て、事業を成長させていけることを願っています。
資金調達力の向上
資金調達力の向上に、なぜブランドが関与するのでしょうか。ブランドと一言で言っても様々なブランドのあり方が存在します。例えば「人から愛されているブランド」「人からの不満が多いブランド」「以前は愛されていたが、今は下火となったブランド」などが挙げられます。人から愛されていればそのまま突き進んでいけば、利益を向上させ、資金調達力を向上させることができるはずです。
しかし、残りの2つの例に対しては、資金調達力が高いとは決して言えないでしょう。ブランド戦略の狙いとして、業績を上げなければならないということです。ブランドを高めるということは、業績を高めるということです。ただし、業績が高まれば、ブランドが高まるということでは有りません。ブランドを高めることを意識し続けることでブランドは高まり、業績へとつながっていくのです。
ブランド戦略とは、経営戦略のなかの1つの戦略であり、差別化戦略です。競争の中でどう勝ち続けるかを考え続け、選ばれ続けなければなりません。当然業績を上げていくためにブランド戦略を実施していくわけですが、どこも商売ですので、勝ち組もいれば負け組もいます。
ブランド戦略は勝ち組になるための確率を上げる戦略ですので、ブランド戦略で勝ち組になる方もいれば、負け組となってしまう方もいます。戦略を練り上げて練り上げていくことは、どんな企業にとっても必要なことです。負け組となってしまえば、結果論として、ブランド戦略に失敗したと言わざるを得ないでしょう。
長い経営の中で、ブランドは上がったり下がったりすることもあると思いますが、良い経営を行うことで資金調達力は当然高まります。ブランドを高めるということは、経営を伸ばすということです。新しい取り組みや安定した経営のためには、資金調達力は必ず必要です。経営を伸ばし続けていくために、どうぞブランドも高め続けていってほしいと切に願います。
ブランド戦略とバリューチェーン
ブランド戦略についてご紹介してきましたが、ビジネスを行っていく中でブランドがバリューチェーンの各段階に影響を与えているとお伝えいたしました。
- 認知度の向上と販売力強化
- 価格交渉力
- ファン化とリピート化
- 広告宣伝コストの削減
- 事業拡大の機会創出
- パートナー企業創出
- 仕入れコストの削減
- 人材採用力の向上
- 従業員のファン化
- 資金調達力の向上
このように10→1の方向に向かって、バリューチェーンをイメージしていただけるはずです。つまり、ブランド戦略は事業全体に大きな効果をもたらし、資金調達、人材獲得、商品開発、広告宣伝、マーケティングという全行程にプラスの関与をしていることが理解いただけると思います。
企業にとって課題はそれぞれですが、原理原則を考えると多くの課題をどんな企業でも共通に抱えていることは容易に考えられます。ブランド戦略を実施し、ブランドを積み上げていくことが将来的にもいかに企業にメリットをもたらすかを共有できたのではないかと思います。
まとめ
あなたの経営課題はいかがでしょうか。経営課題の克服は当記事で説明できるような簡単なものではないかも知れませんが、全ての経営は人の手によるものでありますので、ブランド戦略という視点を学んでいくことで、経営が変わっていきます。
ブランドとは、理念をどのように経営者と人材が体現できるかによって、消費者やお客様に伝わっていくものです。ですので、ブランドという枠組みを理解し、経営方針として意識付けることが会社にとって長期的なメリットを生み出すことができるようになります。
ブランドを別の言い方で表現をすれば、「あなたらしさ」「会社らしさ」とも言えると思います。その「らしさ」が理想的なパーソナリティとして成長し、消費者に伝わっていくことがブランディングになりますので、あなたの会社の「あり方」や「どうあるべきか」を定義づけ実践していくことがブランド戦略であり、バリューチェーンにおいて様々なメリットを生み出します。