コンセプトとは?ななつ星に学ぶ、商品の定義を変える方法
この記事の結論
2013年10月に誕生したJR九州の「ななつ星 in 九州」は、公式サイトによると、客室10室、すべてスイートの列車です。コンセプトは「新たな人生にめぐり逢う、旅。」。私は、列車という商品の定義を変えたのだと読みます。比べられるのは、ほかの列車の速さや運賃ではなく、お客様の人生の時間になりました。
コンセプトとは、商品やサービスを「何として届けるか」を、一言で決めたものです。ななつ星のコンセプトは「新たな人生にめぐり逢う、旅。」。この記事では、公式サイトの言葉をもとに、商品の定義を変える方法を読みます。
2013年10月、九州を走る1本の列車が誕生しました。JR九州の「ななつ星 in 九州」です。公式サイトは、日本初のクルーズトレインと紹介しています。
客室は10室、すべてスイート。7両の列車に、10組のお客様しか乗れません。
公式サイトのメッセージと車両紹介をもとに、ほめる気持ちと、学ぶ気持ちで読みます。
1. 公式サイトの言葉を並べる

ななつ星の公式サイトから、主な言葉を並べます。
誕生
公式サイトの記載:2013年10月、日本初のクルーズトレインとして誕生
コンセプト
公式サイトの記載:「新たな人生にめぐり逢う、旅。」
旅の中身
公式サイトの記載:「九州7県それぞれの輝き、そして地元の人々の輝く笑顔と温もりをつなぎながら」九州をめぐる
車両
公式サイトの記載:「旅の品格をまとう7車両」。ゲストルームは10室、すべてスイート
10周年
公式サイトの記載:2023年に運行開始10周年
第2章
公式サイトの記載:2022年10月から、新たな旅をつくる。九州の歴史や文化を未来へつなぎ、100年後も「希望の星」であり続けることをめざす
2. 移動ではなく、人生にめぐり逢う旅
列車は、ふつう、移動のための乗り物です。早く、安く、正確に、AからBへ運ぶ。比べられるのは、時間と運賃です。
ななつ星の公式サイトが、コンセプトとして掲げているのは、「新たな人生にめぐり逢う、旅。」です。
ここからは、私の読みです。ななつ星は、列車という商品の定義を変えました。比べられるのは、ほかの列車の速さや運賃ではありません。お客様の人生の中で、どんな時間を過ごすかです。
▶ 関連記事:ブランドとは?ロゴではなく、お客様の心の中にある印象のこと
3. 地元の人々を、旅の中身にした

もうひとつ、公式サイトの言葉で目に止まる部分があります。「地元の人々の輝く笑顔と温もりをつなぎながら」。
公式サイトのメッセージには、運行への協力や、地域の方々の長年のおもてなしへの感謝が書かれています。目標として、「九州を世界に発信する」も掲げてきました。
列車の窓から見る景色だけが、旅の中身ではありません。立ち寄る土地で迎えてくれる人が、旅の中身になっています。
4. 4つの要素で読む
ここからも、私の読みです。4つの要素は、一方通行ではなく、互いにつながっています。
- 哲学:「新たな人生にめぐり逢う、旅。」という言葉に出ています。運ぶことより、めぐり逢わせることを売っている
- 戦略:10組だけを乗せるという形に出ています。たくさん運んで稼ぐ道を、自分から選ばなかった
- 組織:列車の中の乗務員だけでは足りません。立ち寄る土地で迎える人々まで含めて、ひとつの旅をつくっています。公式サイトの感謝の言葉は、その広い組織に向けたものだと読めます
- コミュニケーション:「旅の品格をまとう7車両」という言葉と、車両そのものです。公式サイトによれば、車体はロイヤルワインレッドに、金色の「ななつ星」のエンブレム。ひと目見れば、ななつ星だと分かります
ロゴやエンブレムは、ブランドそのものではありません。ブランドは、お客様の頭の中にある評判や印象です。エンブレムは、それを思い出すための引き金です。
そして第2章では、100年後も「希望の星」であり続けることをめざすと書いています。10年走った列車が、次の100年を語っている。哲学が、時間の長さにまで及んでいます。
戦わないブランディングの目で見ると、ほかの列車と速さや運賃で競うのではなく、競う土俵そのものを変えた。ななつ星は、その分かりやすい形だと、私は考えます。
▶ 関連記事:売上で悩んでいる企業こそ必要な“戦わないブランディング”とは
自社の商品の「定義」を、一行で書いてみる

ななつ星の規模や設備は、関係ありません。やることは同じです。
自社の商品は、お客様にとって、何と比べられているでしょうか。列車が、ほかの列車の運賃と比べられていたように、多くの商品は、同じ業界の値段と比べられています。そこで戦うと、値下げの競争になります。
- 自社の商品が、お客様の人生や仕事の中の「どんな時間」になっているかを、一行で書く
- その時間をつくるために、自社のまわりで、だれの力を借りられるかを並べる。 地元の取引先、職人、お客様自身
- その人たちを、商品の中身にする
ななつ星の一行目は、「新たな人生にめぐり逢う、旅。」でした。商品の定義を変える仕事は、その一行から始まります。
福岡の中小企業のブランディングについては、福岡のブランディング会社のページで、考え方と進め方をまとめています。
出典
- 「ななつ星 in 九州」公式サイト メッセージ(誕生年月、日本初のクルーズトレイン、コンセプト、九州7県と地元の人々、10周年、第2章、「九州を世界に発信する」、「希望の星」)。https://www.cruisetrain-sevenstars.jp/message/
- 同 車両紹介(「旅の品格をまとう7車両」、ゲストルーム10室すべてスイート、車体の色とエンブレム)。https://www.cruisetrain-sevenstars.jp/train/
- 私の読み:「商品の定義を変えた」「列車の中に地元の人々を持ち込んだ」は、公式の記載ではなく私の見立てです。
━━━━━━━━━━━━━━━
経営者のためのブランディング勉強会
▶ The Art of Branding
▶ 公式LINE
安田旬佑の発信
▶ YouTube
▶ note
▶ Instagram
▶ X
━━━━━━━━━━━━━━━
株式会社オムニモスーク 代表 安田旬佑