会社名の決め方|資生堂・サントリー・一蘭に学ぶ、名前に意味をこめる考え方
この記事の結論
会社名の決め方を調べると、手続きや登記の話が多く出てきます。けれど、名前で本当に決まるのは、お客様が思い出すときの入口です。資生堂は、西洋の最先端の薬学を興す一方で、社名は東洋の古典『易経』から付けたと公式に書いています。一蘭は、同じ仕切り席に「味集中カウンター」という名前をつけ、日本ネーミング大賞2024で優秀賞を受けました。私は、名前を会社の考え方を、一言で渡すものだと読みます。
「会社名の決め方を知りたい」
そう検索した経営者の方に向けて、3社が公式に書いている名前の話を、順に読んでいきます。
1. 会社名の決め方
会社名や屋号の決め方を説明する記事の多くは、手続きや、使えない名前の確認を中心に書いています。それも大切です。この記事は、その手前の、どんな意味をこめるかを読みます。
2. 公式ページで読める、3つの名前

資生堂
名前について、公式に書かれていること:1872年、日本初の洋風調剤薬局として創業。社名は、中国の古典『易経』から命名。公式は「西洋の最先端の薬学をベースに興す一方で、社名は東洋哲学から命名」と説明している
サントリー
名前について、公式に書かれていること:1899年に「鳥井商店」として開業し、1921年に株式会社寿屋。1963年に、ビールの発売と同じ年に「サントリー株式会社」へ社名を変更した
一蘭
名前について、公式に書かれていること:一人ずつ仕切られた席に「味集中カウンター」と名づけた。2024年、日本ネーミング大賞2024で優秀賞(応募762件)
サントリーの社名の由来は、ここでは書きません。公式の年表で確認できた範囲に、とどめます。
3. 名前は、考え方を一言で渡す
ここからは私の読みです。
資生堂は、商売の中身は西洋の薬学で、名前は東洋の古典です。最先端と、深い教養。 2つを合わせるという考え方が、社名にそのまま入っています。名前を見るたびに、会社が何を大事にしているかを思い出せる。名前が、会社の考え方の入口になっています。
一蘭の「味集中カウンター」は、名前が仕切りの意味を変えた例です。公式リリースは、受賞の理由として「視線の遮断ではなく、食事の集中を促す前向きな価値に転換した発想」を挙げています。設備は同じでも、名前しだいで、お客様が思い浮かべるものが変わります。
サントリーは、1963年にビールを始めた年に、社名をサントリーに変えています。事業の広がりに合わせて、名前を見直した。名前は、一度決めたら終わりではなく、会社の歩みとともに磨き直すものでもあります。
私自身も、名前に意味をこめてきました。私が主催する展示会「フェス・リエゾン」の「リエゾン」は、フランス語で「つながり」を意味します。人と人、人とブランドとのつながりを意味する、つながりの祭典です。名前を聞いた人に、まず「つながり」を思い出してもらう。この名前が渡しているのは、そのひとことです。
4. 会社名を、4つの要素で読む
私は、ブランディングとは経営の全てであり、その活動であると考えています。会社名は、4つの要素のうち、哲学を、コミュニケーションに変える言葉だと読みます。
- 哲学: 何のために存在するのか。名前は、その答えを一言にします(資生堂の、西洋と東洋)
- コミュニケーション: お客様に、どんな気持ちを抱いてほしいか。名前は、お客様が会社を思い出す入口です
- 組織: 同じ方向を向いて、実現できるか。社員が誇りをもって名乗れる名前が、同じ方向をつくります
- 戦略: どうすれば、戦わずに選ばれるか。他社が使えない名前は、比べられない場所をつくります
この4つは、互いに行き来します。名前を考えるうちに哲学が言葉になり、社名を磨く経験が、哲学を磨き直します。
私は、ロゴはブランドではない、と言っています。ロゴは、お客様の頭の中にある評判や印象を、思い出すための引き金です。名前も同じです。名前そのものがブランドなのではありません。名前を聞いたとき、何を思い出してもらえるか。そこにブランドがあります。
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中小企業の会社名・屋号の考え方

屋号を考える一人の事業でも、考え方は同じです。
- 名前の前に、哲学を一言で書く。 何のために存在するのか。名前は、その言葉から生まれます
- お客様が名前を聞いて思い出してほしいことを、書く。 気持ちでも、場面でも構いません
- 呼びやすさと、書きやすさを確かめる。 電話で伝えて、一度で通じるか
- 同じ業界で似た名前がないか、調べる。 手続き上の確認は、専門家に相談してください
- 使い続ける前提で決める。 変えるときも、元の哲学は変えません
名前は、決めた日がゴールではありません。呼ばれ続けるうちに、意味が育っていくものです。
地域の中小企業のブランディングについては、ブランディング会社のページで、考え方と進め方をまとめています。
よくある質問
Q. 会社名は、あとから変えてもよいですか?
サントリーは、ビールを発売した1963年に、社名を変えています。手続きや取引先への影響は、専門家に確認してください。変えるときは、元の哲学を残したまま、言葉を磨くことを私はすすめます。
Q. 自分の名前を会社名にしてもよいですか?
この記事は、公式の事例をもとにしており、個人名の是非は扱いません。どんな気持ちを思い出してほしいかを軸に考えてください。
Q. 屋号と会社名は同じ考え方でよいですか?
考え方は同じです。何のために存在するのかを、一言にしたものが名前になります。
この記事は、公式ページをもとに、私の見方で読み解いたものです。
出典:資生堂「社名」 /サントリー「沿革」https://www.suntory.co.jp/company/history/ /株式会社一蘭 ニュースリリース(2024年12月3日)https://en.ichiran.com/press-release/20241203_ICHIRAN_PressRelease_JapanNamingAwards.pdf
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