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新規事業とは?AWSに学ぶ、自社の困りごとから始める事業の見つけ方

この記事の結論
アマゾンの2025年12月期は、売上7,169億ドル、営業利益は約800億ドルでした。そのうち営業利益の57%を、売上の18%の部門であるAWSが稼いでいます。AWSの出発点は、アマゾン自身の困りごとだったと、AWS自身のページが書いています。自分の現場の困りごとが、出発点になった。 その順番が、中小企業にも持ち帰れる見方です。

新規事業とは、会社が新しく始める事業のことです。アマゾンのAWSは、自社の困りごとが出発点でした。この記事では、公式ページと決算書(10-K)で、その順番を読みます。

アマゾンの売上のうち、いちばん大きいのは、お客様に商品を届ける事業です。

では、営業利益のいちばん大きいのは、どこでしょうか。決算書(10-K)を、そのまま開いてみます。


1. 決算書の3行を読む

アマゾン2025年12月期の売上と営業利益の割合:AWSは売上18%、営業利益57%

アマゾンは、事業を3つに分けて報告しています。北米、国際、AWSです。北米と国際は、オンラインと実店舗でお客様に商品を届ける事業です。AWSは、企業や開発者にITの基盤を貸す事業です。

2025年12月期の数字を、並べます。

北米
売上(億ドル):4,263
売上の割合:59%
営業利益(億ドル):296
営業利益の割合:37%
営業利益率:6.9%

国際
売上(億ドル):1,619
売上の割合:23%
営業利益(億ドル):47.5
営業利益の割合:6%
営業利益率:2.9%

AWS
売上(億ドル):1,287
売上の割合:18%
営業利益(億ドル):456
営業利益の割合:57%
営業利益率:35.4%

売上は、北米がいちばん大きい。利益は、AWSがいちばん大きい。1位が入れかわっています。

100円売って手元に残る営業利益は、北米で約7円、国際で約3円、AWSで約35円です。

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2. なぜ、その形になったのか

先に自分たちが困った。だから、その困りごとを解く仕組みを始めた(AWS公式の記述より)

AWSが始まったのは、2006年の春です。まず、データを預かるS3が出ました。数か月後に、すぐ使えるコンピューターを貸すEC2が続きます。

AWS自身のページが、きっかけを書いています。アマゾンは、自分たちの事業を動かすなかで、ITの基盤を用意して管理することが、難しく、お金がかかると知った。その負担が、優秀なチームを新しいことから遠ざけていた、と。

ここに、順番があります。

先に、自分たちが困った。だから、その困りごとを解く仕組みを、同じ困りごとを持つ他の会社に向けて始めた。自分の現場の困りごとが、AWSの出発点になりました。

3. 利益の列を読むときの注意

数字の読み方に、ひとつ注意があります。

AWSの営業利益は、設備への投資の費用も引いたあとの数字です。2025年は、一部のサーバーとネットワーク機器の耐用年数を6年から5年に短くしました。決算書によれば、この変更で全体の純利益が約10億ドル減っています。主にAWSの部門への影響です。それでも、456億ドルが残っています。

また、北米と国際の営業利益率が低いことは、それだけでは良し悪しを決められません。決算書は、お客様向けの事業について、品揃え、価格、利便性に注力していると書いています。利益率の低さは、その注力の裏返しとも読めます。

4. 「シェフとキッチン」で読む

私はこの数字を、「シェフとキッチン」の話として読みます。

お客様に見えているのは、シェフです。買い物の画面、届く速さ、品揃え。他社と違うことを「行う」部分です。

利益を生んだのは、キッチンでした。他社と違うものを「持つ」部分、つまり、まねのできない組織の能力です。巨大な買い物の仕組みを、止めずに動かし続ける力。その力が、2006年に、ひとつの商品になりました。

シェフは、見えるので、まねされます。キッチンは、見えないので、まねされにくい。利益の列に、キッチンの強さが出ます。

戦わないブランディングの目で見ると、アマゾンは、お客様向けの事業とは別の土俵に、自社の組織の力を貸し出しました。同じ土俵で他社と競うのではなく、自社にしかない力を、新しい場所で使った形だと、私は読みます。

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5. 組織の力がなければ、戦略は実行できない

ブランディングの4つの要素で言えば、2006年の「自分たちの基盤を外に開く」という戦略を実行できたのは、自分たちの現場でITの基盤を動かしてきた、組織の力があったからだと読めます。

組織の力がなければ、戦略は実行できません。AWSの営業利益率35.4%という数字は、戦略の大きさだけでなく、それを動かし続ける組織の厚みも見せています。


中小企業の試算表で、同じことをやる

自社の試算表で確かめる3つ

アマゾンの規模は、関係ありません。やることは同じです。

  1. 自社の売上の1位と、利益の1位を並べる。 同じ商品でしょうか。同じお客様でしょうか
  2. 別だったとき、そこに自社のキッチンがあります。 お客様に頼まれて、手間をかけて、いつの間にか自社の強みになっていた仕事を探してみてください
  3. その仕事を、自社の困りごとから生まれた商品として、言葉にする

そういう仕事ほど、本人には当たり前すぎて、気づきにくいものです。決算書は、会社が自分の強みを知るための、正直な資料です。売上は店の大きさを、利益は台所の強さを教えてくれます。

福岡の中小企業のブランディングについては、福岡のブランディング会社のページで、考え方と進め方をまとめています。


出典と計算

  • Amazon.com, Inc. Form 10-K(2025年12月期)。売上・営業利益は同書のセグメント情報。https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1018724/000101872426000004/amzn-20251231.htm
  • AWS「Our origins」(成り立ち、S3とEC2)。https://aws.amazon.com/about-aws/our-origins/
  • 計算(筆者):AWSの営業利益の割合=45,606÷79,975=57.0%。売上の割合=128,725÷716,924=18.0%。営業利益率=45,606÷128,725=35.4%。北米=29,619÷426,305=6.9%、国際=4,750÷161,894=2.9%(単位:百万ドル)
  • 金額は10-Kの数字を億ドルに丸めて表示。割合は整数に、営業利益率は小数第1位までに(小数第2位を四捨五入)。

株式会社オムニモスーク 代表 安田旬佑