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コーポレートカラーの決め方|色は「思い出すための引き金」。ヤマト運輸・ニコン・ティファニーに学ぶ、決めたあとに育てる方法

この記事の結論
コーポレートカラーは、社長の好みで決める色ではありません。ブランドは、お客様の頭と心の中にあります。色は、それを思い出すための引き金の1つです。だから決め方の順番は、「どう思われたいか」が先で、色はあと。そして、決めたあとに、同じ色を使い続けて育てる。ヤマト運輸・ニコン・ティファニーの公式資料に、その育て方が書かれています。

「会社の色を、何色にすればいいのか」

ロゴを作り直すとき、名刺やウェブを新しくするとき、経営者の方から、よくこの相談を受けます。この記事では、3社が公式に公開している言葉を読みながら、色の決め方と、決めたあとにやることを順に書きます。


1. コーポレートカラーとは何か。色は、ブランドではない

コーポレートカラーは、会社を表す色のことです。ロゴ、名刺、ウェブ、店舗、車両、制服。お客様が会社に触れる場所で、くり返し使われる色です。

ここで、最初に押さえておきたいことがあります。私は講義で、ブランドを「企業や商品の評判・印象・感情」だと説明しています。それは、人間の心の中に存在する無形資産です。ロゴマークや色は、その入れ物にあたります。

つまり、色そのものは、ブランドの中身と別のものです。ロゴも同じです。ロゴは「思い出すための引き金」です。色も、その引き金の1つです。黄色いトラックを見た瞬間に、頭の中にある会社の印象がパッと出てくる。色は、その「パッ」を起こす役目をしています。

ロゴが引き金である理由は、ロゴとは?ブランドではなく「思い出すための引き金」に書きました。コーポレートカラーは、ロゴタイプ・シンボル・書体・写真の調子などと並ぶ、見た目をそろえる要素の1つです。全体の決め方は、VI(ビジュアルアイデンティティ)とは?を読むと分かります。この記事は、その中の「色」だけに絞ります。

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2. ヤマト運輸:黒と黄色は残し、白とグレーを足した

3社のコーポレートカラーの決め方:ヤマト運輸・ニコン・ティファニー

ヤマトホールディングスは、2021年3月1日のニュースリリースで、同年4月1日から新しいクロネコマークを使い始めると発表しました。1957年の制定以来、初めてのデザイン変更です。

このとき、コーポレートカラーについて、こう書かれています。クロネコマークで親しまれてきた黒と黄色をメインカラーとし、その2色を引き立たせる白とグレーのサブカラーを加えた4色にする、と。

白とグレーを足した理由が、私には目を引きました。原文は、「黒、黄色を大切にしながら、都市、地域にノイズを生まず、より自然に溶け込む白、グレーを採用しました」です。

ここからは、私の読みです。色を「変えないもの」と「環境に合わせて足すもの」に分けている。クロネコマークとともに長く親しまれてきた黒と黄色は、お客様の頭の中に入った引き金です。これは残す。そのうえで、街の中でトラックや店舗がどう見えるかを考えて、白とグレーを足した。色を決めるとは、引き金を守りながら、見え方を整え続けることだと分かります。決めたあとも、育て続ける仕事です。

3. ニコン:色の意味を、言葉で決めている

ニコンは、公式サイトのブランドシンボルのページで、現行のシンボルを2003年に作ったと説明しています。そして色の意味を、こう書いています。黄色は広がりと情熱を、黒は信頼性と品質を表す、と(英語ページの記述を、私が訳しました)。

同じページには、1988年に社名をニコンに変えたとき、青を使った新しいシンボルを採用したことも書かれています。つまり、会社の色は、一度変わっています。1968年のシンボルをデザインしたのは、亀倉雄策氏です。

色に、会社としての意味を言葉で付けている。黄色は、「広がりと情熱」を表すために黄色です。書かれているのは、意味のある色、という説明です。社員が色の意味を言葉で言えると、名刺の色も、展示会のブースの色も、同じ方向を向きます。

4. ティファニー:「なぜこの色か」に、決定的な答えはない

ティファニーの公式プレスサイトには、ティファニーブルーについて、意外なことが書いてあります。創業者のチャールズ・ルイス・ティファニーがなぜこの色を選んだのか、決定的な答えはない、と。19世紀の宝飾でターコイズが人気だったことと関係するという説がある、とだけ書かれています。

一方で、こうも書かれています。1998年から、ティファニーブルーは色の商標として登録されている。パントンの色名は、創業年にちなんで「1837 Blue」。

ここに、色の決め方の、いちばん大事なことがあると私は思います。世界で知られた色でさえ、選んだ理由は、はっきりしていない。それでも引き金として働いているのは、同じ色を、長く、同じ場所で使い続けたからです。理由を後から立派に飾るより、使い続けることのほうが、ずっと効いています。

5. 3社の色を、1本の年表に並べてみる

3社のコーポレートカラーの年表:ティファニー・ヤマト運輸・ニコン

ここまでの公式の記載を、年の順に並べ直します(年はすべて各社の公式ページ・リリースの記載です)。

1837年
できごと:ティファニー創業。いまのパントンの色名「1837 Blue」は、この年にちなむ

1957年
できごと:ヤマト運輸のクロネコマーク制定

1968年
できごと:ニコンのシンボル(デザインは亀倉雄策氏)

1988年
できごと:ニコン、社名変更とともに青を使ったシンボルへ

1998年
できごと:ティファニーブルーが色の商標として登録される

2003年
できごと:ニコン、黄色と黒の現行シンボルへ

2021年
できごと:ヤマト運輸、クロネコマークを制定以来初めて変更。黒と黄色を残し、白とグレーを足す

並べると、3社の色の扱いは、ばらばらです。ニコンは、色を変えました。ヤマト運輸は、マークを変えても色を残しました。ティファニーは、選んだ理由がはっきりしないまま、色そのものを登録するところまで使い続けました。

変えた会社も、残した会社も、続けた会社も、色を「一度決めて終わるもの」として扱っていません。ニコンは、いまのシンボルの黄色と黒それぞれに、意味を言葉で付けています。ヤマト運輸は、残す色と足す色を分け、足す理由を街の見え方で書きました。どの会社も、色を変える日と残す日を、自分で決めています。

私は講義で、「僕らは感情なんですよ。相手の感情をデザインするのが、実際ブランディングなんですよね」と話しています。お客様の頭と心に入った色は、その感情を呼び起こす引き金です。だから、色を決めるときに考えるのは、今年の見栄えより、この年表の次の1行です。10年後、20年後に、どの色を残し、どこで何を足すのか。「どう思われたいか」が決まっていれば、その1行は迷わずに書けます。

自社の色を決める手順

名刺を1枚、机の上に置いて始めます。

  • お客様にどんな気持ちになってほしいかを、一言で書く。 色の名前は、まだ書きません
  • その気持ちを、色に言葉で結びつける。 ニコンのように「この色は〇〇を表す」と、社員が言える一文にします
  • 使う色の数を、少なく決める。 メインの色と、それを引き立てる色。数が増えるほど、引き金は弱くなります(トンマナの考え方と同じです)
  • 決めた色を、同じ場所で使い続ける。 名刺・ウェブ・店・車両・封筒。変えたくなっても、お客様の頭の中にある引き金を先に思い出してください
  • 見直すときは、残す色と足す色を分ける。 ヤマト運輸のように、メインは守り、環境に合わせてサブを足す。全部を変えるのは、引き金を捨てることです
  • 自社の色の年表を、1枚つくる。 決めた年・変えた年・その理由を1行ずつ書きます。次に見直すとき、何を残すかがこの年表で分かります

色は、使い続けた年数で、会社のものになります。今日決める色は、自社の年表の最初の1行です。10年後にお客様の頭の中で「パッ」と出てくる色を、いま選んでいます。

地域の中小企業のブランディングについては、ブランディング会社のページで、考え方と進め方をまとめています。

▶ 関連記事:ロゴとは?ブランドではなく「思い出すための引き金」

▶ 関連記事:VI(ビジュアルアイデンティティ)とは?役割と決め方を解説

▶ 関連記事:ブランドアイデンティティとは?「どう思われたいか」の決め方


よくある質問

Q. コーポレートカラーは、何色まで決めるべきですか?

メインの色を1〜2色、それを引き立てる色を1〜2色が目安です。ヤマト運輸は、メイン2色とサブ2色の4色と公表しています。数が多いほど、引き金としては弱くなります。

Q. 社長の好きな色で決めてはいけませんか?

好きな色から始めることもできます。ただ、その色でお客様にどんな気持ちになってほしいかを、言葉にしてください。言葉にできた色は、社員も同じように使えます。

Q. 途中で色を変えることはできますか?

できます。ただし、お客様の頭の中に入った色は、会社の資産です。ニコンのように意味を言葉で決め直す、ヤマト運輸のようにメインの色は残してサブを足す、という順で考えてください。


この記事は、ヤマトホールディングス・ニコン・ティファニーの公式の記載をもとに、私の見方で読み解いたものです。

出典:ヤマトホールディングス ニュースリリース「新しい『クロネコマーク』と『アドバンスマーク』」(2021年3月1日) /ニコン「Brand Symbol」https://www.nikon.com/about/corporate/brand/brand_symbol/ /ティファニー「Tiffany Blue」https://press.tiffany.com/our-story/tiffany-blue/

株式会社オムニモスーク 代表 安田旬佑