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ブランディングの切り口としての歴史

歴史やストーリーを何度もテーマにしているのは、私が1人の消費者としてブランドを知る時に、他の商品との違いを知りたくなるからです。商品の背景にどんな出来事があったのか思いを馳せることが個人的には好きです。かわいいから欲しいとか、みんな持っているから欲しいとかで心が揺れることはありません。空港にいると、remowaのキャリーバックを見かけることがあります。ファッションで物が欲しいというのは、アジア人に多いのではないかと思います。remowaも100年以上のブランドであり、歴史もあるようです。スーツケースの機能面だけで考えるとドンキホーテでも購入してもいいわけですよね。確かに丈夫ですし、メンテナンスもきちんとされますし、値段相応の価値はあるかもしれません。ただ、歴史があるにもかかわらず、心が動くほどのストーリーが見当たりませんでした。

一方で万年筆のモンブラン。こちらもとてもメジャーブランドです。良い万年筆を探しだしたら、その候補にモンブランは上がるかもしれません。結論から言えば、モンブランを手にとって触ってみたいと思いました。ルージュ・エ・ノワールという作品が世に出て、モンブランは世界的なブランドの第一歩を踏み出すことになりました。関心を持っていただけた方は以下のページをご覧いただければと思います。

http://bit.ly/2X7zNSt

ブランドが設立された当時、1900年代初頭は、新しい時代の幕開けでした。アールヌーヴォーやマッキントッシュが人気を博していました。そして“蛇”はそれらの時代に非常に愛されたモチーフなのです。それは強さと生命の象徴でした。ヨーロッパだけではなく、中国やアメリカにおいても強いシンボルでした。驚いたことに、ウィンストン・チャーチルの妻は、手首に蛇の入れ墨をしていたそうです。「ルージュ・エ・ノワール」に蛇がモチーフになっているのはそういう背景があったからです。

そして蜘蛛がモチーフになっている理由は、「古来、『執筆』という創造行為のメタファーであり続けたスパイダー(クモ)。たとえば、珠玉の詩的言語で織り上げられた文学作品は、その精緻さゆえに『クモの巣のようだ』と表現されます。また、古代ギリシャの詩人オウィディウスが『変身物語』でアラクネーを取り上げて以来、繰りかえし文学に登場するモチーフであり、18世紀後半から20世紀初頭にかけては、詩人のヴァレリーやマラルメ、随筆家のポンジュの作品に見られるとおり、頻繁に文芸作品の中に表れています。モンブランはこの魅惑的な生物の文学的・芸術的な存在感に敬意を払い、1920年代に、この独特のフォルムを持つ詩的で美しい有機体を、アーティスティックなマスターピースとして発表したこともあります。ほぼ1世紀を経た2018年、モンブランは再びそのアイコニックな遺産にスポットを当て、ヴィンテージデザインとモダンデザインの融合をはかり、華やかなアールデコの時代へと夢を運びます。」だそうです。一本の万年筆から素晴らしい世界が広がっている瞬間を感じていただけますか?ちなみに、キャップの先端に付いている六角形の白いロゴマーク「ホワイトスター」はヨーロッパ最高峰の山・モンブラン山頂を覆う万年雪を表し、ペン先はモンブラン山の標高である「4810」が刻まれています。