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そもそもブランディングって何なんでしょう?素朴な疑問にコンパクトに答えます。

ブランディングが必要な背景

近年、ビジネスの課題を解決するための手段として、ブランディングへの関心が高まっています。ブランディングと言っても人それぞれの解釈があります。当社は、日本とアメリカでブランディングの事業を展開しており、これまで多くの企業や団体のブランディング支援を行ってきました。その中でも、先行きが見えない社会や市場の変化とともに、ブランディングという概念も大きく様変わりしています。当記事にたどり着いた皆さんも、決め手となる事業推進の糸口が不透明になったり様々な理由があって、ブランディングへの関心をお持ちなのだと思います。

昨今はブランディングに関する書籍がたくさん出ていますが、ブランディングの現場において多くのクライアントの課題と向き合ってきた当社の知見を、経営において、また、ブランディングにおいて活動されている皆さんに必要とされる情報をお届けしたいと思っています。今回はブランディングを行っていく際に留意しておくこと、そして、プロジェクトが軌道になるために何が必要になるかなどを順次解説してきたいと思っています。

そもそも「ブランディング」とは何か?

「ブランディング」の共通認識はあってないようなもの。

日本はどちらかといえばブランディングというものに欧米ほど関心を持つことが少なく、高級ブランドのために存在する言葉だという風に捉える人が多かったのではないでしょうか。「ウチはBtoB企業だし、センスもないから」とか「自分たちは製造部門でマーケティングは関与していないから」とか、そのようなことをお考えの方もおられたかもしれません。事実、当社がお話させていただいたことのあるお客様はそのような反応の方もおられました。

確かにブランディングとは、パッケージを作成したりネーミングを行ったりすることで差別化を図ろうとか、PRを積極的に行ってイメージを良くしようとか、コミュニケーションにおけるブランディングが中心だったことは事実です。これらは日本においてブランディングというものに対する代表的な認識であり、それはマーケティング戦略の一環として考えられてきました。そのような誤った認識があったことから、ブランディングは必然的に広告やPR部門のお仕事であり、自分たちのお仕事とは別部門であると分けて考えるのは、ごく自然なことだったかもしれません。

しかし、ブランディングに関するこのような認識は、実は海外のブランディングに対する認識と随分異なっているのです。私自身がアメリカでのブランディングのお仕事の経験からも言えることは、ブランディングはまさに経営そのものであり、ブランドというものは企業活動を後押しする存在であるということです。ブランディングが経営そのものであるために、人事、戦略、商品、マーケティング、R&D研究開発、製造、広報などすべての部門にブランドが切り離せないものであるということは、多くの日本企業の盲点になっていると感じます。

ブランディングは全社で

言うなれば、ブランディングは組織全体が関与するものであり、経営者または全部門を横断する権限を持つブランドの責任者が陣頭指揮を取るものであり、マーケティング部門だけで取り組んで育てていくものではないということがご理解いただけると思います。

私はクライアントからブランディングの事業部を立ち上げる際に、「ブランド」を冠する専門の事業部を立ち上げることに対しては、一旦熟考するようにお伝えしています。というのも、「ブランド」と名がつくことにより、他の事業部が自分ごとではなく、「ブランド」を冠した特定の事業部が推進するものだと考えてほしくないためです。ブランドは従業員一人ひとりが意識するものであり、全体事業として取り組まなければならないからです。一人ひとりの意識と行動がブランドを強くしていくという大きな前提を全社で共有することがとても重要なことです。

「ブランド」と「ブランド戦略」と「ブランディング」

あなたがブランディングに対する誤った認識がもしあるのであれば、こちらであらたに見直しできればと思っています。こちらで取り上げている「ブランド」と「ブランド戦略」と「ブランディング」についてあなたは明確な違いを説明することはできますか?組織が価値を高めるには、技術力や商品力だけではなく、企業活動の中にブランド構築のためのプロセスが意図的に組み込まれており、いかにブランド価値を高められるかが重要になります。ブランディングとは、単なるマーケティング活動の一環ではなく、ブランドの提供価値や活動の重要性を組織がしっかりと理解した上で、組織全体が一貫した活動を行うことにより、強いブランドが確立されていきます。その結果、その基盤の上に長期的なブランドが構築され、ビジネスに成長をもたらすことができるのです。

ビジネス的な表現をすると、企業にとってブランドとは資産であると言えます。企業活動の結果、価値を生み出し、生活者の中に識別性や差別性をもたらします。そして、生活者はブランド体験を重ねることにより、感情移入を引き起こし、ブランドのファンとなったり発信者になったりします。

これでは選べない

例えば、目の前には水が入ったペットボトルがあるとします。一方は水道水と書いてあり、もう一方はエビアンというブランドの水です。どちらにより高い金額を払いますか?おそらく多くの方が、エビアンを選択するのではないかと思います。このようにブランドが確立されることによって、企業は価格プレミアムを手にすることができ、適切なブランドマネジメントを行うことで、長期的にこの価格プレミアムは維持されることになります。この価値こそがブランド価値と言い表すことができるものです。

ブランディングとは、ロゴマークを作ることでも、パッケージを作ることでも、広告予算を投下してテレビCMを打つことでもありません。これらはコミュニケーション戦略と言って、ブランディングの一部になります。何をブランディングするかにもよりますが、コーポレートブランディングになれば、調達、商品開発、研究開発、人事、物流、広報など全てにおいてブランドが関与してきます。これらの活動を通じて、ターゲット顧客の心を動かし、購買へとつなげてもらう全ての活動こそが、ブランド価値を創出する大事な要因になります。つまり、経営そのものがブランディングになっているということにお気づきではないでしょうか。このように顧客の購買への意思決定に影響を与えることにより、ブランド価値が向上する。これがブランディングの根本的、本質的な狙いとなります。さて、「ブランド」と「ブランド戦略」と「ブランディング」、それぞれの説明は改めて後半にお伝えさせていただきます。

ブランドが強くなるとどんなメリットがあるのか、また、ブランドを強化することによってどんなことがもたらせれるのでしょうか。ブランドは、全ての企業活動が関与することはすでにお伝えしたとおりですが、まずは全従業員がブランドへの関与を意識付け、あらゆる資源を投入することによって顧客を魅了し、継続して購入していただけるような関係性を構築することにより、その結果として企業に利益がもたらされるのです。

全社で取り組むブランディング

日本の経営者はブランディングへの関与が低い?

ブランディングとは、事業戦略と組織開発とブランドがそれぞれ関与し合っています。そして、ブランドというものが事業と組織を広範囲にドライブさせます。コーポレートブランディングのリーダーは、本来ならば企業経営者が行うべきものだと考えます。経営者がブランディングに対して本気で取り組むことは、ひいては哲学や理念の共有にも繋がり、全従業員をさらなる活躍の機会を作ることにつながると私は信じています。

当社がこれまで関わってきたプロジェクトは、ブランディングに対する必要性を高く感じている方が多かったのですが、経営者でない担当者レベルの場合であれば、ブランディングに対する認識の違いから、会社全体を巻き込んだり、予算化への合意に手間がかかったりとするケースが見受けられます。では、なぜこのようにブランディングを行うことへの取り組みがスムーズに行かないのでしょうか?それは次のような理由があるからではないかと考えられます。

①「ブランディング」そのものに対する誤った認識を持っている。

すでにお伝えしたとおり、ブランディングとはコミュニケーション戦略のことだと思われている方が多いということ。つまり、WEBやパッケージ、POPやチラシといったコミュニケーションツールの開発がブランディングという誤った認識があります。確かに広告や販促、広報などの活動はとても大切なことなのですが、これは狭義のブランディングであって、ブランドを資産と考え、企業価値を最大化させる活動という意味での、広義のブランディングとは異なります。1980年代ごろだと思いますが、いわゆるDCブランドというものが日本に上陸し、高価なメーカーだけがブランドという誤った認識があることも「ブランド」や「ブランディング」をわかりにくくしていると考えられます。

②バブル崩壊後のデフレの影響から安くていいものが重宝されてきた。

バブル期は「一生モノ」という意味で、高くても価値があるものが飛ぶように売れました。しかし、バブルが崩壊し、不況から抜けることができなかったこの20~30年の間に、人々の消費へのマインドは随分と冷え込んでしまいました。そのような中、企業が取った戦略は「安くていいもの」を作るということでした。安くていいものというビジネスは、付加価値を高めて高収益を目指すブランディングの考え方とは、少し路線が異なるかもしれません。一定以上の品質の商品を低価格で販売するファストフードやファストファッションブランドはその提供価値が確立されているため該当しませんが、日本のブランドは付加価値を高めることがどうやら苦手のようにも感じます。

ブランディングは現場の従業員とともに、トップとボトムの両極から。

長きにわたる経営においてブランディングは最優先事項の1つであるものの、経営者や管理職と現場の従業員がともに取り組むことはほぼ皆無と言えます。生産性向上のための「いかに高い価値を作ることができるか」という高付加価値戦略を進むことが経営において重要視されていますが、既存業務に忙殺されブランディングに取り組めていないようです。不透明な時代と言われて随分時間は経っていますが、常にパラダイムシフトしている現代社会において、切り開いていく企業姿勢がなければ、長期的な価格競争やデジタル化の波から抜け出すこともできず淘汰されてしまうでしょう。今企業が為すべきことは、やはりブランディングです。トップが自らが意識改革を行いボトムアップできる環境を作ること、そして、高付加価値を実現する事業へと育てていく。そのための会社のあるべき姿を指し示し、全社で取り組んでいくこと。それが、経営を強くし、理念の実現させるのです。

ブランディングの理解

ブランディングに求められる事前の取り組み

ブランディングとは広告活動や販促活動とイコールではないことをお伝えしました。ブランディングとは、経営資源を活用して、ブランド価値を資産として高めていく活動です。言うなれば、ブランディングには全社的に取り組んでいかなければならないということです。そうなると、自分自身の事業の役割以外のことも関わってくるため、どのように取り組んでいけばいいか戸惑ってしまうかもしれません。

ブランディングを推進するにあたり、まず最初に取り組むことは、既存ブランドの現状認識です。時代によって過去に取り組んできたブランディングの変遷を理解し、ブランドをさまざまな視点で観察することが必要です。ブランディングでもっともありがちな凡ミスは、今までの活動や考え方を脇に置き、根拠のない直感だけで取り組んでしまうブランディングです。一言で言えば、思い込みですね。ブランディングにはさまざまな経験をしてきたプロフェッショナルでさえ困難を極めるものなのに、感覚的に取り組んでしまって後から収集がつかなくなるというのは避けたいところです。ブランディングに取り組みたいという気運があるにも関わらず、まずは情報収集を怠ってはならないのはフラストレーションが溜まりますが、ここは我慢して、現状を正しく認識することから初めましょう。

ブランドの起源

識別記号としてブランド

牛

諸説ありますが、ブランドという言葉の語源は、古くスカンジナビアの言葉で焼き付けることを意味する「Brandr」であると言われています。自分の牛と他人の牛を識別するために、焼印を押したことが起源とされています。ブランドが識別とか認識という意味合いを含んでいるのは、このような背景があったためです。そこに品質などの見えない価値が加えられ、現代のブランドというものに集約されました。

あらゆるモノには、名前がつけられています。意識的では無いところで、企業は他の類似のモノとと識別しています。名前がつけられるということはそういうことになります。それはいうなれば「識別記号」となり、顧客の関心を獲得したり、ファンになってもらったりという付加価値が加わることでブランドとして、頭の中や心のなかに印象付けられます。

日本独自の進化をしてきたブランディング

日本においては、ここ数十年のなかで、ブランドというものに対する認識は随分と変化してきました。多くのみなさんがブランドはウチには関係ないとか、ブランディングにはお金が高く付くとか、テレビコマーシャルしないといけないとか、誤った認識があるのはそのためです。

日本のアパレルメーカーによるDCブランドの影響もあり、アパレルや高級ブランドなどだけが持つ特権のような時代がありました。そして、企業にとって、ロゴマークやネーミングをブランディングと読んだCI・VI時代があり、そして、顧客やステークホルダーとの関係性を考慮したブランド体験の時代となりました。この頃は、ロゴマークやネーミングといったビジュアル面でのアイデンティティだけではなく、顧客体験を通じてどのように気持ちを動かさなければいけないかということまで考えられるようになりました。また、インターネットの拡大とともに、双方向とかコミュニケーションの手法も変化してきた時代と言えます。

そして、現代は、SNSの発展も大きく貢献していますが、ブランドは企業が生活者と共同で高めていくものになってきました。つまり、マイケル・ポーター教授の言う共創のステージになったのだと考えられます。テクノロジーの発展とともに、コミュニケーションも様変わりました。ブランディングは企業だけでできるものではなくなっており、情報過多の時代において、好意的な行動を取ってくれる生活者の支援を得ることを戦略的に視野に入れながら取り組む必要があります。ブランディングは企業が仕掛けていくものの、良くも悪くも勝手にブランドが広まっていく時代においては、企業一存のブランディングは難しいと言わざるを得ません。

トリプルメディア

メディアには3種類あると言われています。オウンドメディア、ペイドメディア、アーンドメディアです。オウンドメディアとは、自社で運用するメディアで、WEBSITEや自社SNSなどがそうです。ペイドメディアはテレビCMや新聞広告などにあたり、アーンドメディアは、個人のSNSや広報などになります。企業が自社のチャネルであるオウンドメディアや広告活動によるペイドメディアを活用したとしてブランディングに取り組んだとしても、今は透明性の時代であり、個人のSNSやレビューサイトによって、企業の予期せぬ結果を生んでしまいかねません。この事実にあまり関心を持たずに、過去の成功体験で事業を成長させていこうとしても、望んだ結果とは程遠い現実になってしまいます。ブランディングはますます手法が多様化しており、その勉強が私たち企業には欠かせないものになっています。

繰り返しとなりますが、ブランディングは全社的な取り組みになります。全ての顧客接点において、統一した一貫性のあるアプローチでなければなりません。その結果、顧客との間に信頼関係が構築でき、顧客とともにブランディングできるようになります。ブランドとは、作っている最中に壊れ始めます。そのため、企業は全従業員にブランドに関与していることを認識してもらい、全社的に取り組むという指針が必要です。

企業目線のブランディング

ステークホルダーとのトラストビルディング

さて、ブランドとは、どこに存在するものでしょうか。一つは企業、もう一つはそれ以外のステークホルダーの頭や心の中に存在します。そのため、ブランドの所有者というのは、企業だけではないと言えます。ブランドは、企業が主語か、それ以外が主語かによって、全く意味が異なってしまいます。「わたしはこのブランドを日常よく使います」という場合は、ブランドが指すものは商品のことであり、厳密に言えば本来のブランドの意味と異なった使われ方がなされます。「われわれのブランドは、学生たちに認知されていません。」というケースでは、ブランドは会社または商品を指していると言えます。つまり、誰目線で発言しているブランドかということが曖昧なままではブランディングの内容も異なってきます。それぞれの立ち位置でブランドとブランディングを活用することを意識的に行っていく必要があることをぜひご理解いただきたいと思います。

企業は顧客などのステークホルダーと見えない約束をしています。それをつなぎとめているものがブランドです。あなたは持続的に活動するためにステークホルダーにどのような約束をしていますか?それは企業の哲学・理念や活動そのものの中に存在しています。最近では、パーパスと表現されることもあり、顧客にどのようなベネフィットを提供しているかが問われています。企業は事業を行うことによって、顧客の中に確固たる存在感を構築することで、見えない約束事が双方に醸成されていきブランドが頭と心に具現化されます。その積み重ねで、ブランドに対するポジティブな感情が高まり、顧客は消費や口コミという行動を起こすことになります。

そのために企業がやるべきことは、その約束事を設定するということです。ブランドというものは、人の記憶と感情の中に自然と積み上がっていきます。それはポジティブでもネガティブでも両方存在します。そのため、企業は、「自分たちのブランドというものはこういうものです。だから、ステークホルダーの皆さんとこのような約束事ができます。」と目には見えない、けれども、感じることができる約束事が構築されていくのです。

ステークホルダーは顧客だけではなく、従業員も含まれます。従業員と会社の間にも約束事があります。会社のパーパスは従業員にも影響を与え、そのブランドらしい振る舞いを要求しているはずです。組織が大きくなればなるほど、ブランドの共有は難しくなります。しかし、この場合においても、企業は確固たる哲学で、ロイヤルティの醸成されていない新入社員を育てていかなければなりません。このインナーブランディングを怠ってしまうと、不祥事という形で企業のブランド価値を下げてしまう結果に陥ってしまいます。このようなことから、企業とステークホルダーの間には、強い信頼関係を構築していく必要があるのです。

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ブランドは形がつかめない無形資産である

企業がブランディングという顧客との信頼関係の構築には、大きく2つのステップがあります。まずは、ブランドの軸を企業側で確定させるということ。それは、無形資産であるブランドをいかに形式知として伝わりやすい素材にするかということです。次のステップはいわゆる一般的にみなさんが理解しているブランディングのステップです。顧客とのコミュニケーションになります。

冒頭でもお伝えしましたが、ブランド強化ためのブランディングは、全社的に取り組むべきプロジェクトです。企業の真摯な事業活動は顧客の評判を生み、ブランドの情緒的な価値となり、顧客の行動変容のきっかけとなり、企業の収益となります。

顧客目線のブランディング

さて、次は顧客の目線でブランディングを考えてみたいと思います。ブランドとは、顧客の頭の中と心のなかに存在する印象そのものです。それは、記憶の中に評判としてしっかりと刻まれています。それは、製品は工場、商品は店舗、ブランドは顧客の中に存在するということを意味します。

顧客タッチポイント

企業は、様々な事業活動のなかで顧客と接するタイミングがあります。そのためブランディングは、顧客がそのブランドについて、聞くとき、見るとき、感じるとき、味わうとき、嗅ぐとき、つまり五感を使って体験するとき、すべての場面においてブランディングは実施されているのです。そのため企業は、商品だけではなく、人材、物流、Website、言葉、スピード、すべての場面において、ブランドが積み上がっていると言えます。

そのため、ブランディングに成功すると、顧客は商品を購入しますし、成功しなければ、商品を購入してくれません。つまり、顧客がもつブランドという印象や評判というものは、企業にとっては死活問題であると言えます。まして、SNSの時代である昨今、いい評判も悪い評判も広がりやすく、企業はブランディング前提で経営することが必須になっているのです。

合理的よりも情緒的で心を動かすブランディングを

機能的価値と情緒的価値

情緒的なつながりをつくる

イギリスのIPAという研究機関によると、機能訴求の合理的なメッセージによるコミュニケーションは短期的な売上貢献にとどまり、ブランドへの評価に影響を与えないということが報告されています。すこし乱暴な結論に至っている気がしますが、言わんとする事は長期的な売上に貢献するのは、顧客の感情が大事であるということは容易に理解できます。そのためブランディングによってブランドをより強く成長させることができれば、感情を動かすことに繋がり、長期的な関係性を構築できます。そのとき、価格に対しての感度(価格感受性)が減少するため、価格競争にも巻き込まれにくいとされています。ブランディングの一つのゴールとして、この合理的なニーズを満たすだけではなく、感情にアプローチしていくことがとても大切なことだということをここでは強調したいと思います。

人は合理的に判断していない

従来、人々の購買行動というものは、合理的な理由に起因すると言われてきました。そのため、企業は機能的な訴求が重要でした。このことは、もちろん重要であることには変わりないのですが、このコミュニケーション戦略のブランディングはどちらかと言えば旧来型のアプローチと言えるかもしれません。昨今は行動心理学などでも実証されているように、「人は合理的には行動しない」というこことを目前にすれば、これからのブランディングというものは、新たなステージに踏み出さなければなりません。

また、デジタルの普及に伴い、顧客購買履歴が後追いできるようになったこともその裏付けになりますが、顧客は悩みながら類似商品と比較検討したりして購入に至ることから、感情へのアプローチが今後のブランディングには欠かせません。ただし、顧客の頭や心のなかでポジティブな印象をいただかせるには、どうしても時間を要してしまいます。そのためブランディングを行う場合は、すぐに成果が出にくい場合もありえます。ブランドオーナーは、漢方薬を煎じて飲むがごとく、価値提案を長期的に行うことを踏まえ、ブランディングに取り組み必要があります。

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ブランディングを行う対象と組織の共通認識

ブランディングを行う対象について

ここまでで自社のブランディングについて考察が進んだ方もいらっしゃることでしょう。さて、ここでは一旦原点に立ち返って考えてみたいと思います。ブランディングとは、見せ方だけのテクニックではありません。ブランディングは企業の実態と評判を含むすべての事業活動に影響を与えます。事業が成功するか否かは、顧客からどのような評判を得ることができるかにかかっています。顧客の脳と心の中に確固たる評判が形成されることによって、事業の成功確率は高まります。その良い評判となるものが良いブランドとなります。良い評判を得るためには、2つのアクションが必要です。それは、ブランドを確立させること(事業の成長)とブランドの実態を構築する活動です。

ブランディングは事業と評判の両立により、ほんとうの意味でのブランドとなります。事業が育たないブランディングは価値がなく、評判が悪い事業は持続できません。この良い事業と良い評判の両立、これは、企業が推進している事業を良い事業へと育てること顧客が脳と心に良い評判をもつということです。ブランディングにあたり、企業がどのような価値を顧客に提供するかは企業主体でリードしなければなりません。そのため、どのような対象をブランディングするかは企業が戦略として深く考えなければならないのです。

ブランドの対象を共通認識にするねらい

ブランドというものは、その主語や所有者によって全く意味合いが異なることはお伝えしてきました。顧客を含めたステークホルダーの脳と心にいい評判をもってもらうブランディングは、1部門での取り組みでもなく、短期的なキャンペーンでもなく、関係者は心血を注いで取り組んでいく必要があります。同じブランドやブランディングという言葉を使用しても、企業そのものを指すのか、プロダクトを指すのか、便利な言葉であるがゆえに曖昧なまま、事業が進んでいってしまいます。そのため、その認識に立って上で関係者はブランディングしていく必要があります。

また、ブランディングの取り組みを進めていく中で、対象ブランドが現在どのフェーズにいるかということも関係者では共有していくことが重要になります。この点を曖昧なままで進めていくと、ブランディングプロジェクトが大きくなっていくに連れ、関係者が増えることになり、それぞれの立場で自由にブランドとブランディングを捉えるようになってしまい、ゴールが不明確になってしまいかねません。そのためには、立ち上げの段階から、また、現状のプロジェクトにおいても早い段階から、中心メンバーでブランドの中核となる共通認識をぶらさない定義を策定することが必要です。

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最後に

いかがだったでしょうか?ブランドに対する認識が変わりましたか?ブランドは企業だけではなく、顧客の中にも存在します。そのため、企業が思い描くようなブランドを顧客が連想しない可能性が大いにあります。だからこそ、事業の実態と顧客の評判をマネジメントするために、コミュニケーションを担当する部署だけではなく、全社的に取り組んでいくことが求められています。ブランドを更に理解して、実益に結びつけるためにも引き続き自社のブランドと向き合ってみてください。何かお力になれることがあれば、遠慮なく当社までお知らせください。